毒物と放射性物質

直前の記事で、「放射性物質は、いわゆる毒物と違うので、中和させて無毒化するといったことができません」と記しましたが、なぜそうなのか、少しだけ話を深めておきます。

例えば、気体の塩素は強い毒性を持ちます。大量に吸い込むと死に至ります。また、塩素がナトリウムと酸素と結合すると次亜塩素酸ナトリウムに。強い殺菌力があるので、プールの消毒や家庭用の漂白剤に使われます。殺菌力があるということは、ちょっと量を間違えれば、人間にとっては毒物になります。一方で、塩素がナトリウムとだけ結合すると塩化ナトリウムです。いわゆる塩(しお)のことで、ほとんどの生物にとって不可欠なミネラル源になります。

放射性物質はどうでしょうか?液体であっても、固体であっても、気体であっても、その原子から発する放射線は変わりません。それどころか、どんな原子と、どんな形で結合しても放射線を出す力(放射能)は変化しないのです。

なぜなのでしょうか?
いわゆる毒物の毒は分子レベルの化学反応によるものなので、化合(結合)の形や相手を変えることによって、無毒化することができます。悪名高いダイオキシンにだって、一応、無毒化する方法はあります(だからといって安心というわけではありませんが)。

放射線はどうでしょうか。例えばガンマ線は、原子の中で原子核の周りを回る電子が軌道を変えるという量子力学的な現象によって生じるものです。アルファ線はヘリウムの原子核、ベータ線は電子線ですが、いずれも量子力学的な効果によって生じていることに違いはありません。放射線の発生は、原子の中という、私たちが覗くことのできない世界で起きているのです。

じゃあ、放射性物質を人為的に他の物質に変えることは出来ないのか… それは、超大型の加速器など特殊な装置の中でしかできません。それもごく僅かな量だけです。さらに、加速器を使っても、放射性原子は他の放射性原子に変わるだけで、安定した原子にはなりにくいものです。

人類は放射性物質から放射性を取り除くことはできません。それは、どんなに科学技術が発展しても不可能です。
だから、自然に減っていくのを待つしか方法はありません。ヨウ素131が半分に減る半減期は8日間。セシウム137やストロンチウム90は30年。プルトニウム239は2万4千年です。

もうこれ以上、余計な放射性物質を作り出してはいけないのです。

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