除染考(1):「除染」とは…

政府は「除染、除染」と騒ぎ立てますが、一向にその成果は上がっていません。
それどころか、「フクシマの手抜き除染」が世界的なニュースとなり、この国は多額の税金をいったい何のために、どこに投入しているのか、日本中が疑問を持っています。
そこで、一度原点に立ち帰って、除染の問題を何回かに分けて考えていくことにします。

まず除染の目的。地域を汚染している放射性物質を取り除いて、住民が安心して暮らせる状態にすることです。20ミリシーベルト/年以上で居住制限のかかっている地域では、安心して帰還できるようにすることです。
しかし、考えてみると、「安心して」というのは曖昧な言葉です。これは具体的には、「何の制限もなく生活できる状態に戻すこと」を指すと考えないといけません。「山林に入ってはいけない」「山のキノコは採ってはいけない」「川のヤマメは食べてはいけない」という状態では、「故郷に帰った」とか「故郷を取り戻した」ことにはなりません。
本来は、3.11以前の状態に完全に戻してこそ、除染の完了です。

さて、20ミリシーベルト/年以上のエリアでは、国が除染を行うことになっています。1ミリシーベルト/年から20ミリシーベルト/年のエリアでは、地方自治体が除染を行い、財政的には国が支援することになっています。
ここで予備知識として再整理しておきたいのは、1ミリシーベルト/年と20ミリシーベルト/年という数字です。
実は、どちらも安全だという根拠のある数字ではありません。ICRP(国際放射線防護委員会)によれば、「一般の人が浴びても差し支えないとされる1年間の被ばくの基準は1ミリシーベルト」「原子力事故からの復旧期においては年間の被ばく量を多くても1ミリシーベルトから20ミリシーベルトまでにとどめるべき」ということです。
日本政府が採用しているのは復旧期の上限値。事故直後から1ミリシーベルトなのか20ミリシーベルトなのかという議論がありましたが、なし崩し的に20ミリシーベルトという高い放射線量を押し付けられているのが現状なのです。おまけに、復旧期がいつまで続くのか、明確どころか、おおむねの目安さえ示されていません。

ここでは詳しく述べませんが、1ミリシーベルト/年以下でも、ガンなどの発生率が上昇しているデータは、チェルノブイリだけではなく、世界中で報告されています。
●参考サイト:NHK「低線量被ばく 揺れる国際基準」に関連するブログ

では、チェルノブイリの基準はどうなっているのでしょうか?何度か掲載した図ですが、もう一度確認しておきましょう。

ウクライナもベラルーシもロシアも同じ基準で、5ミリシーベルト/年以上のエリアは危険なので居住が禁止されています。
さらに、1ミリシーベルト/年から5ミリシーベルト/年で住民には移住の権利があります。国の支援を受けながらそこに住み続けるか、他の地域に移住するか、自由に選択することができるのです。フクシマとはレベルの違う対応が行われています。

そして、フクシマよりも厳しい基準を適用しているチェルノブイリですら、今、白血病や心臓疾患など、慢性被ばくが原因とされる病気が多発しているのです。
事故発生から27年を経ようとしているチェルノブイリですが、立ち入り禁止区域の外が「何の制限もなく生活できる状態」になっているわけではないのです。

フクシマに話を戻しましょう。
残念ながら、すべてを3.11以前に戻すのは不可能です。納得のいかない数字ではありますが、当面は、1ミリシーベルト/年を目安にしましょう。「1ミリシーベルト/年から5ミリシーベルト/年で移住の権利」「5ミリシーベルト/年以上で立ち入り禁止」というチェルノブイリなみの基準は最低限必要です。

国が本当に除染できるというなら、5ミリシーベルト/年以上のエリアをすべて買い上げて、きれいに除染してから売り出せば良いだけの話なのです。

安易に、「除染」とか「帰還」という言葉に踊らされるのは、とても危険なこと。ここで言う、「危険」とは、具体的に、「命や健康に関わる危険」を指していることは、言うまでもありません。

 

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