内部被ばくをどう評価するのか(2)

●体内にどれだけの放射性物質があるかは計測できない。
さて、体内に入ってしまった放射性物質の量や、そこから出ている放射線量を計ることはできるのでしょうか?ホールボディカウンターという機器があります。これは、身体全体から出ているガンマ線を計測して、体内にある放射性物質の量を計測するものです。ですから、崩壊する時にベータ線とガンマ線の両方を出す核種、つまり、セシウム137とヨウ素131には、ある程度有効です。
体外に出てくるガンマ線の波長と線量から、元素の種類(核種)と、それが体内にどれだけ存在するかが分かり、内部被ばく量を推定することができます。ただし、ある核種が、臓器ごとにどれだけ蓄積されているか、といった細かい計測はできません。

また、ベータ線しか出さないストロンチウムや、アルファ線しか出さないプルトニウム239が出す放射線は、ホールボディカウンターでは検出できません。
それどころか、ガンマ線を出さない核種による内部被ばくは、どんな機器を用いても、身体の外から計ることはできないのです。それは、アルファ線とベータ線が、体内では、ごくわずかしか進むことができず、外に出てこないからです。


ストロンチウムやプルトニウムに関しては、誤差の大きい尿検査しか、方法がないとされています。●水に溶けるか溶けないかで、まったく挙動が違う。
その核種が、水に溶けるか溶けないかも重要です。
水に溶けるということは、とりもなおさず、血液に溶けるという意味です。
ここまでで扱ってきた、ヨウ素131、セシウム134・137、ストロンチウム90は、血液に溶けて全身を周り、言ってみれば、集積すべき場所に集積します。その臓器内では、ほぼ均等な濃度で存在すると考えられます。

一方、プルトニウム239のように水に溶けない核種はどうでしょうか?エアロゾルとかホット・パーティクルとか言われていますが、小さな粒子(といっても、原子数は数億から数十億)として、肺に取り込まれ、肺組織のどこかにしっかりと居座ってしまいます。そして、半径数ミクロンの範囲に、延々、アルファ線を浴びせ続けるのです。
飲食で入ってきた場合は?「プルトニウムは飲んでも大丈夫!」というトンデモ発言をした東大教授がいますが、彼は、微粒子一個が腸壁のどこかに引っかかっただけで、大変な危険性があることを理解していません。

●生物学的半減期に騙されない。
最後に、「生物学的半減期」の話をしましょう。
通常、半減期と言ったら、物理学的半減期のことで、放射性物質(核種)が崩壊(放射性物質を放出して別の元素に変化)して、原子数が元の半分になるまでの時間です。
一方で、生物学的半減期は、人体内の代謝によって、その核種の半分量が排泄されるまでの時間です。これには、物理学的半減期は算入していませんので、ヨウ素131では、物理学的半減期が8日なのに、生物学的半減期が138日、なんていう変な話になってしまうのです。そこで、実質的に体内で、その核種が半分になるまでの時間を「体内での有効半減期」として、下に示します。


まず、この表から読み取れるのは、「ヨウ素131は、たった7日で半分に減るのに、子供の甲状腺に大きな傷跡を残す」ということです。
一方、「セシウム137は半減期が30年なんて言うけど、身体の中では70日で半分に減るから、あまり心配は要らない」なんていう、とんでも無い発言も見受けますが、騙されてはいけません。
同じ地域で、同じような食生活を続けたら、毎日、ほぼ同じ量のセシウム137を摂取し続けることになります。いくら排泄が進んでも、新しく入ってきますから、やがて体内でのセシウム137の濃度は平衡に達し、そのまま長きに渡って内部被ばくが続きます。
ですから、日常的に飲食するものに対しては特に、そこに含まれる放射性物質の量を徹底して低く管理する必要があります。真っ先に浮かぶのは、米であり、牛乳であり、水です。現在の暫定基準値は、高すぎるし、大雑把すぎます。以上、内部被ばくについて、2回にわたって、今までとは違う視点からまとめてみました。
「分かっていないことが多い」ことに愕然とされた方もいるかと思います。しかし、これが現状なのです。
これまで、人類が遭遇した大規模な内部被ばくの例は、広島・長崎とチェルノブイリしかありません。広島・長崎のデータは、核心部分をいまだにアメリカが隠しています。チェルノブイリは26年を経て、今、やっと研究が本格化した段階です。

しかしながら、内部被ばくが、甲状腺ガンと白血病だけに留まらず、肺ガンや子宮ガンなど、あらゆるガンの引き金になることは、すでに隠しようのない事実になっています。チェルノブイリでは、最近、内部被ばくが原因とされる心臓疾患が増えています。肥田舜太郞さんが指摘する原爆ブラブラ病(無気力症+多臓器不全)もあります。

とにかく、内部被ばくに対して、最大限の警戒を続ける必要があります。
それと並行して、まず、内部被ばくと外部被ばくを、正確に分けて、それぞれ正確に評価すること。生物学的にも、医学的にも難しい問題はありますが、ある臓器に対して、どういった危険性が、どのくらいあるのかということを、細かく明らかにしていかないと、うやむやのままに、責任の所在が宙に浮きかねません。それ以前に、多くの人たちの命と健康を守ることができません。

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