進行する内部被ばく

福島・飯舘村と川俣町の住民の尿から、放射性ヨウ素(ヨウ素131と思われる)と放射性セシウム(セシウム134とセシウム137と思われる)が検出されました。

冷たい言い方かも知れませんが、内部被ばくの進行は、当然と言えば当然。空気中を核分裂生成物が舞い、水道水にも、農作物にも紛れ込んでいます。人間は、通常、呼吸と飲食によってしか、外界の物質を体内に取り込みません。今の福島で、核分裂生成物が体内に入り込まない方が不思議なくらいなのです。そして、もっと不思議なのは、こういった検査結果が、事故から3か月以上、いや4か月近く経って初めて出てくるという現実。国や自治体は、本気で住民の健康を、いや、命を考えているのでしょうか。

ともあれ、今回発表されたデータで、もっとも気になるのは、「5月上旬」の段階ですら、微量の放射性ヨウ素が検出されている点です。ご存じの通り、放射性ヨウ素の中心であるヨウ素131の半減期は8日です。事故後2か月を経た段階で「微量」であっても検出されることは、たいへんな問題です。「3月中旬」や「3月下旬」ではどんな値だったのか?
「検査直前に、微量のヨウ素131を摂取した」とは考えにくく、「大分前に、高濃度のヨウ素131を摂取し、それが体外に排出される前に減った」と考えるのが自然でしょう。そして、体内にある間、ヨウ素131は主に甲状腺に蓄積し、近い将来、甲状腺ガンを引き起こすようなDNAの破壊を行っています。

今回、内部被ばくの事実が証明された人たちの中には、4歳の子供まで含まれています。慎重に、そして、徹底して、甲状腺を含む健康状態を監視していく必要があります。もちろん、そうしたからって、甲状腺ガンなどを100%防げるわけではありませんが、少しはマシなはずです(こんな悲観的な記述をしていると、涙が出てきます。しかし、事実なのです)。

もう一つ言うならば、ヨウ素131は、すでに減ってしまっているので、今後、新たに深刻な内部被ばくを引き起こす可能性はありません。しかし、セシウム137やストロンチウム90は、半減期が30年。とにかく、体に入れないことを考えなくてはいけません。この観点からすると、現在の避難地域は、まったく狭すぎるものです。国はより広いエリアの住民に、無条件で「移住権」を認め、東電と国が、その裏付けをするべきだと思います。お金の問題ではありません。田畑を棄てて逃げる人には田畑を保証し、牧場を棄てる人には牧場を、ということです。もちろん、新たな地で農業や畜産を始めるのはたいへんな苦労が伴います。しかし、少なくとも数十年に渡って核分裂生成物による汚染が残る場所で、汚染された作物を作り続けるという選択肢はないと思います。幸か不幸か、休耕田・休耕地は全国にたくさんあります。不可能な話ではないのです。

内部被ばくの話を少し真面目に考えるなら、これが事故現場に近い福島の人たちだけに襲いかかっている問題ではないということも分かります。
ホットスポットと呼ばれる地域では空間線量が跳ね上がり、水道水中の核分裂生成物もゼロには戻っていません。何が基準なのか分からない基準値以下の野菜は平気で出回っています。おそらく、東京でも、尿中の核分裂生成物をちゃっんと測定したら、内部被ばくが裏付けられる人が多数出るでしょう。いや、ほとんどの人が、すでに福島由来の核分裂生成物を体内の取り込み、骨髄や内臓のどこかでDNAの破壊が進んでいるのです。

日本政府はいったい何を考えているのでしょうか。私には、「万一、ガンになった人には被ばく手帳を与えて、医療を保証すればよい」という程度にしか考えていないように思えます。健康は、いくらお金を積まれても購えないものです。広島・長崎の被爆者に「被ばく手帳が欲しかったですか?」と問うたら、「そんなものより、原爆が要らなかった」と言われるでしょう。

そして、今、原発事故によって蝕まれつつある福島の人たち、そして、私たちの健康の危機は、数十年経っても回復しないものです。それどころか、世代を超えて、その恐怖が引き継がれる可能性が高いのです。

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