外部被曝の現状

今現在、私たちは、そして福島の人たちは、どの程度の放射線に被曝していて、今後はどうなっていくのでしょうか?状況を一旦、客観的に見直し、今後について考えてみたいと思います。

まずは外部被曝です。原発の至近距離でない限り、外部被曝の原因は、空気中を浮遊する塵などに乗った「浮遊放射性物質」と、それが地面や建物に沈着した「沈着放射性物質」に分けられます。この両方から受ける放射線量を合計したものが空間線量です。

ただ空間線量=被曝線量ではありません。屋内では線量が下がるからです。ここで面倒なのは、「浮遊放射性物質」と「沈着放射性物質」では、屋内で減る率が違うことです。

「沈着した放射性物質」は、家の中にいればかなり遮れるでしょう。上のデータを見ると木造家屋でも屋外の0.4倍となっています。
一方、「浮遊放射性物質」は、木造家屋内では0.9倍にしかならないとされています。対策は、窓を閉め切ったり、洗濯物を外に干さなかったり、外出から帰ったら玄関の外で埃を払うといった「花粉症対策」と同じ。これである程度被ばく量を減らすことができるとされます。なお、ここで扱っている放射線はガンマ線です。
なぜならアルファ線とベータ線は透過力が非常に弱いため、それを発する物質に直接手で触ったり、体内に取り込まない限り危険性はあまりないからです(体内被曝は深刻です)。ちなみに空気に対する透過力は、アルファ線が1センチ以下、ベータ線が1メートル程度。ガンマ線はかなり遠くまで届きます。従って、事故現場から数キロ以上離れた場所では、外部被曝はガンマ線だけを考えておけばよいわけです。ではまず、東京の状況を見てみましょう。

都内の降下物(塵や雨)の放射能調査結果」を見ると、「浮遊放射性物質」は、かなり減ってきています。今 現在の空間線量の多くは「沈着放射性物質が出している放射線」と考えてよいと思います。ということは、木造家屋における軽減係数は、一応、0.4と。

空間線量はどうでしょうか。

 

ここのところ下がってきて、0.07μGy/h(=0.07μSv/h)程度です。
これを一日8時間を外で過ごすとして計算すると、年間の実効被曝量は
((0.07μSv/h x 8時間)+(0.07μSv/h x 0.4 x 16時間))x365日=368μSv/y=0.368mSv/y
となります。
一般人の年間限度量=1mSv/y以下ではありますが、福島第1の事故以前の平均値は0.04μSv/hくらいでした。倍近くにはなっていますので安心は禁物です。

一方、福島は…
どこを探しても、「浮遊放射性物質」のデータがありません。これでは正確な外部被曝の量を計算しようにもできないはずです。まだまだモニタリングの体制が弱体です。
やむを得ず東京と同じ「木造家屋における軽減係数=0.4」で計算してみます。
5/4現在の福島県双葉郡の空間線量は1.7μSv/h。これを年間の実効被曝線量に直すと8.9mSv/yとなり、問題となっている20mSv/yには及びませんが、1mSv/yという基準の8倍に達しています。
一方で、http://atmc.jp/school/ を見ると、空間線量は地域によってかなりの偏りがあり、中には6.8μSv/h(年間実効被曝線量=35.7mSv/y)などという恐ろしい値も出ています。リンク先にある地図を大きく拡大してみると分かりますが、地域の中でも大きく値が異なる場所があります。これは、放射性物質が埃と同じように吹き溜まることを示しています。狭い地域の中にも、大変危険な場所と比較的安全な場所があります。それを見極めるためにも、より一層綿密なモニタリングが必要でしょう。
その結果、ある程度広い範囲で年間実効被曝線量が1mSv/yを越える地域では、大規模な避難が必要になると思います。

今回は、外部被曝だけを考えてきましたが、次は内部被曝を取り上げます。

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