100,000年後の安全

「100,000年後の安全」というドキュメンタリー映画を観てきました。
原発から排出される高レベル放射性廃棄物(簡単に言えば使用済み燃料棒)の最終処理場を巡る話です。舞台はフィンランド。オルキルオトという場所に建設中の放射性廃棄物の最終処分場“オンカロ(隠された場所)”にカメラが初めて入り、処分場の当事者たちにインタビューを試みます。現在ある高レベル放射性廃棄物が人に害を及ぼさなくなるまでには10万年かかるという前提で作られたオンカロ。しかし、映画(マイケル・マドセン監督)は、「10万年もの間、人類はオンカロが危険な場所であるということを伝えきれるのか」と問いかけます。例えば、今から10万年前といえば、ネアンデルタール人の時代で、私たちの直接の祖先である新人がアフリカの一部で暮らし始めた頃。この先10万年、人類は放射性廃棄物の危険性を語り継ぐことができるのでしょうか。
ツタンカーメンが棺に納められたのは、今からたった3,000年程前のこと。開けてはいけないと厳封されていたその棺桶は1922年に開封されました。オンカロは3,000年どころではありません。10万年の間、安全に保管するというのはとてつもない話なのです。
10万年は、私たち人類にとっては、とても長い時間です。しかし、放射性物質にとっては、それほど長い時間ではありません。例えば、プルトニウム239の半減期は2万4千年。アメリシウム 241は432年、ウラン235は7億年です。比較的半減期が短いとされるプルトニウム239でさえ、1/16にしか減らないのです。
放射性廃棄物を人類は扱いきれるのだろうか… 「100,000年後の安全」は、静かに本質的な問題を突きつけてきます。

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