福島とソウルの空間線量率比較を考える

日本の外務省(在韓国日本大使館)が、福島とソウルの空間線量の比較を公表し始めました。
在韓国日本大使館 のサイト
韓国の与党「共に民主党」の「日本経済侵略対策特別委員会」が、福島第1原発事故で「汚染された地域」として、来年の東京五輪の競技場周辺などの放射性物質検出量を記した汚染地図を公表したことに対する反撃らしいです。

確かに、韓国側が公表した汚染地図(日本のある市民団体が作成したものらしい)は、かなり大雑把なもので、イメージ図と言ってもよいくらいです。これは誤解を招くので、「共に民主党」は、この汚染地図だけは撤回したほうがよいでしょう。

一方、日本側は、不正確な汚染地図を正すのなら、正確な汚染地図を公表すればよいだけなのです。
それが、原発過酷事故を起こした国の責任でしょう。
放射線量等分布マップ拡大サイト
など、たくさんあります。
上記は、航空機からのモニタリング結果ですが、他にも、土壌汚染マップなど、たくさんあります。

話を空間線量率比較に戻しましょう。
在韓国日本大使館のサイトを見ると9月27日現在で、

福島市 0.135μSv/h
いわき市 0.060μSv/h
東京 0.036μSv/h
ソウル 0.120μSv/h

という数字が出ています。
9月27日のデータを静止画で貼っておきます。

「福島の空間線量率は、ソウルと大差ないから100%安全だよ」と言わんばかりです。
ところが、ここには大きなカラクリが、ふたつ隠されています。

① 場所によって、自然放射線による空間線量率が異なることをまったく無視している。
② 自然界に存在する天然の放射性物質と、原発事故の結果生じた核分裂生成物では、生体に及ぼす危険性が危険性がまったく異なることに言及していない。

自然放射線の量は、海抜、緯度、地質や地盤、建物の建材などによって変わります。
福島とソウルでは、海抜も緯度も大差ありません。
ソウルの自然放射線による空間線量率が高いのは、韓国に広く分布する花こう岩の影響です。
花こう岩には、微量のウラン238が含まれていて、そこからガンマ線が出るのです。
ウランと聞くと、最も恐ろしいアルファ線を想像するかも知れませんが、アルファ線は、遠くまで届かないのと、遮蔽物に弱いので、花こう岩の外に出てくることはありません。
また、ウラン238は、完全に花こう岩の中に閉じ込められているので、線源そのものを人が吸い込んで内部被ばくを起こす可能性は、ほぼありません。

福島はどうでしょうか…
原発事故の前、福島市の空間線量率は0.04μSv/h程度でした(グレイ(Gr)単位で記されていますが、ガンマ線の場合、1μGr/h=1μSv/hです)。

現在は、0.135μSv/hです。その差、0.095μSv/hが、福島第1から漏出した核分裂生成物によるものです。今残っているのは、主に、セシウム134とセシウム137です。
これらは、埃のように舞ったり、トタン屋根に張り付いたり、一時的に植物に吸収されたりして、生活空間の中に存在しています。 原子力事故によって生じた核分裂生成物が、 自然放射線の線源と違うのは、人が吸い込んだり、呑み込んだりして、内部被ばくを引き起こす可能性があるということです。
内蔵や体組織が内部被ばくの直撃を受けます。その影響は、決して空間線量率では測れないものです。

参考までに、世界中で自然放射線による空間線量率が高い地域を列挙しておきます。
ラムサール(イラン) 1.16μSv/h
ガラパリ(ブラジル) 0.60μSv/h
ケララ(インド)0.43μSv/h
陽江(中国)0.40μSv/h

福島とソウルの空間線量の比較が、いかに非科学的で、悪意に満ちた情報操作であることが、お分かり頂けるでしょう。

いまもって、飯舘村、浪江町、南相馬市、葛尾村、双葉町、大熊町、富岡町の7市町村にまたがる帰宅困難区域があるのを忘れてはいけません。
避難を余儀なくされている人の数は、2019年9月6日の時点で約5万人に上ります(復興庁データ)。
その一方で、「福島は安全!」と世界に向けてアピールする日本政府があると…

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