火山と原発

言うまでもないことですが、日本列島は地震が多く、火山活動が活発です。どちらも、”世界有数の”と形容することに、誰も反対しないでしょう。

ユーラシアの東端にある日本列島。その下では、プレートと呼ばれる、地球を覆う巨大な岩盤が複雑に重なり合っています。ユーラシアプレート、フィリピン海プレート、北米プレート、太平洋プレートの4つです。
地球を覆っているのプレートは全部で10数枚。その内の4つが日本列島の下に入り込んでいる。この事実を知っただけで、日本が火山国、地震国であることに納得がいきます。
4つのプレートは、ゆっくりとですが別々の動きをしています。従って、プレートが交差する場所では、逃げ場を失った巨大な力が陸地を押し上げます。それが日本列島だと言ってもよいでしょう。
また、プレートの接点で生じた歪みが、一気に戻ろうとするとき、巨大地震が発生します。東日本大震災の震源は、大平洋プレートが北アメリカプレートの下に潜り込む、まさにその場所でした。

交差するプレートは、火山活動の源にもなります。気象庁のホームページに分かりやすいイラストがあったので、下に紹介します。

さて、日本列島にはいくつの火山があるのでしょうか?
数え方にもよりますが、約300とされています。そのうち、活火山が約100。活火山の定義は「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」です。言い方を変えれば、「今後、いつ噴火してもおかしくない火山」。それが活火山です。1億3千万人弱が暮らす、この小さな列島に100もの活火山がある。まず、このことをしっかり認識する必要があります。

火山が噴火したら原発はどうなるのか… その想定は恐ろしすぎて、誰も正面から触れてこなかったのが事実です。
「大噴火は起きない」「溶岩流や火砕流が原発に到達することはない」。何の裏付けもないまま、原子力の専門家たちは、そう自分に信じ込ませてきました。多くの一般の人たちは、何となくそれに従って、危険を認識することはありませんでした。
しかし、大きな間違いでした。日本列島における火山噴火は、福島第1はもちろん、チェルノブイリをはるかに越える悲惨な原子力事故を引き起こします。以下、具体的に2つの例で見ていきましょう。

●九州の大カルデラ火山の噴火
多くの方は、”阿蘇カルデラ”という言葉には聞き覚えがあるでしょう。カルデラとは、火山の活動によってできた大きな凹地のことです。
阿蘇の場合は、大噴火で大量のマグマが地表に吹き出し、その時、地中にできた空洞に地面が落ち込んで凹地になったものです。ちなみに阿蘇カルデラを造った大噴火は8万7000年前に起きたもので、火砕流は九州全域を越え、現在の山口県にまで及びました。

九州には、阿蘇・九重(くじゅう)・加久藤(かくとう)・姶良(あいら)・阿多(あた)・喜界(きかい)という6つの大カルデラ火山があります。
カルデラ火山が大噴火すると、1000℃近い高温の軽石と火山灰が火山ガスとともに時速150キロ以上という高速で地表を走ります。火砕流です。威力は凄まじく、”すべてのものを破壊する”と言って間違いありません。

日本列島におけるもっとも新しいカルデラ火山の大噴火は、約7300年前に起きました。鹿児島南方沖の海底火山が噴火し、喜界カルデラを作ったときのものです。
火砕流と火山灰によって、南九州と四国・中国の一部が壊滅(中国地方の瀬戸内海側でも20センチ以上の降灰があった)。すべての生命が死に絶えました。このエリアでは、大噴火の前後で発掘される土器の形式がまったく異なることから、同じ縄文人とは言え、先住民はすべて死に絶え(あるいは移住し)、その後に外来者が住みつき、あらたな文化を築いたと考えられています。
九州の大カルデラ火山は、5000年~1万6000年に1回の割合で、九州全土と四国・中国のかなりの部分を無生物状態にするような大爆発を起こしているのです。最後の爆発から7300年。今すでに、次の大噴火が、いつ起きてもおかしくない時期になっています。これは、多くの火山学者が指摘している通りです。

「大噴火が起きたら、全部壊滅だから、原発があろうとなかろうと関係ない」と思う方がいるかも知れませんが、それは大きな間違いです。
確かに、大火砕流が火力発電所やガスタンクを飲み込んでいったとしても、特に被害が大きくなるとか、そういったことはありません。噴火の威力に比べたら、ガスタンクの大爆発だって、蚊に刺された程度です。
しかし、原発の場合は話が違います。そこには核燃料があり、大量の放射性物質(使用済み核燃料に含まれる核分裂生成物や超ウラン元素、さらに汚染されたコンクリートや金属など)があります。火砕流に飲み込まれようが、溶岩に溶け込もうが、放射性物質が減ることはないし、それが発する放射線が減ることもないのです。
九州でカルデラ火山の大噴火が起きると、川内原発、玄海原発、伊方原発の3つは確実に制御不能に陥ります。全電源喪失はもちろん、建屋はおろか、格納容器、圧力容器まで破壊され、メルトダウンした核燃料と大量の放射性物質が露天にさらされるでしょう。
川内が178万キロワット、玄海が348万キロワット、伊方が203万キロワット。合計で729万キロワットの出力に相当する核燃料があります(原子炉内だけでこの量。他に核燃料プールや共有プールにも使用済み核燃料があります)。
ほぼすべての核燃料が露天にさらされたチェルノブイリ4号炉の出力は100万キロワットでした。伊方・玄海・川内の3原発が制御不能になったら、チェルノブイリの7倍を超える放射性物質が飛散する恐れがあります。大噴火の被害を越えて、ほぼ日本全土、朝鮮半島、中国の一部まで、数十年、あるいは100年単位で人が住むことはできなくなるでしょう。
この危険性を知りながら、川内原発の再稼働を目論む安倍政権の原子力政策は、愚の骨頂としか言いようがありません。

 

噴火がある程度予知できれば、対応策はとれるのでしょうか?
無理です。数日、あるいは数週間前に分かれば、発電時の核分裂連鎖反応を止めることはできます。しかし、使用中の核燃料(=使用済み核燃料)は、数年の間、強い放射線と崩壊熱を出すので、循環する水に漬けた状態でしか保管も移動もできません。せいぜい動かせて、原子炉に併設された核燃料プールまででしょう。押し寄せる火砕流への対策にはなりません。運転員は、暴走するのが分かっている原子炉を放り出して逃げ出すか、火砕流に巻き込まれて焼け死ぬか、選択肢は2つしかありません。悲しいかな… いずれにしても、原子炉は人間の制御から外れ、メルトダウンへと一直線です。

●成層火山による中規模火砕流
成層火山とは、ほぼ同一の火口からの複数回の噴火で、溶岩や火山砕屑物(火山礫や火山灰、軽石など)などが積み重なって形成された円錐状の火山のことです。富士山が代表格で、桜島や浅間山も成層火山です。日本列島では、約30の成層火山が中規模な火砕流をともなう噴火を起こしてもおかしくない時期に入っています。
特に原発や原子力施設に影響を及ぼす可能性が高い成層火山を上げてみましょう。
青森県にあるむつ燧(ひうち)ヶ岳と恐山は、東通原発や六ヶ所村に近く、噴火の際に無事に済むとは考えられません。
新潟県の妙高山が噴火した場合、柏崎刈羽原発まで火砕流が達するかどうかは微妙とされていますが、冬に噴火したら、火砕流が積雪を溶かして、大規模土石流が発生します。原子炉を日本海に押し流してしまうと考えられています。もちろんメルトダウン、放射性物質の大漏出となります。柏崎刈羽原発は822万キロワットの出力を持つ世界最大の原発です。

実は、火山の噴火によって、原発が制御不能、メルトダウンに至るシナリオは、上記の2つだけではありません。
地面に火山灰が10センチ以上積もる状況になれば、ほとんどの原発では、海からの冷却水の取り入れができなくなり、メルトダウンすると考えられます。海に落ちた火山灰が取水口を詰まらせてしまうからです。
伊豆諸島の利島(としま)や御蔵島(みくらじま)、神津島(こうづしま)などが噴火すれば、岩屑なだれが海中に突入し、巨大な津波が浜岡原発を襲う恐れがあります。
富士山の次の噴火は、山体崩壊を伴う可能性が大です。その時に発生する岩屑なだれが駿河湾に突入すれば、やはり浜岡原発は大津波に襲われます。
北海道の泊原発は、ニセコ火山から、たった13kmしか離れていません。ひとたび噴火が起きれば、岩屑そのものに埋まってしまう可能性があります。
北陸地方の海岸線は、小規模な火山(単成火山という)ができやすい地殻構造です。原発さえ無ければ、数百人が避難、移住すれば済む小規模な噴火にしかならないので、これまで問題視されることはありませんでした。しかし、原発が絡むと話が違ってきます。若狭湾の原発銀座のいずれかの原子炉の至近で、小規模とは言え、火山噴火が突然起きたら… 背筋が凍る思いです。避難、移住すべき人数は、アッと言う間に数十万人に。京都・大阪にまで影響が及べば数百万人、いや一千万人以上になってしまうのです。

この列島に、原発を作ってしまったことは、大きな間違いでした。今すぐ、完全脱原発に舵を切り、放射性物質をできるだけ安全な場所に、できるだけ安全な形でしまい込むことを考えなければなりません。
再稼働なんて、もっての外なのです。

●参考文献
『噴火と原発』(守屋以智雄)/岩波書店「科学 2014年1月号」ほか
●お薦め資料
川内原発直近の巨大活断層と幾度も襲った火砕流』/反原発・かごしまネット

 

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