かつて最終処分場があった

映画『100000年後の安全』で取り上げたられたフィンランドのオンカロが、世界で唯一の放射性廃棄物最終処分場として注目されています。
そんな中で、「かつて最終処分場があった」という話題に焦点を合わせます。オンカロの前に「あったはずだった」最終処分場のお話です。

実はドイツに、低・中レベル放射性廃棄物を地層処分(放射性廃棄物を地下深くで半永久的に保管する)する最終処分場があったのです。20年ほど前までは…

場所はアッセというところで、ドイツ語での名称は”Schachtanlage ASSE Ⅱ”。

●Schachtanlage ASSE Ⅱの場所: Googleマップ

直訳すると”アッセ第2鉱山”という感じでしょうか。Schachtanlage は”鉱山”という意味ですが、他に”地雷”という訳もあって、ちょっと意味深です。

なぜ、最後に”Ⅱ”が付いているのかというと、もともとは古い岩塩鉱山だったからです。1909年から1964年まで、岩塩を掘っていました。
閉山後、ここを原発や他の核施設から出た放射性廃棄物の最終処分場にしようとなったのです。そこで、鉱山が生まれ変わるという意味で”Ⅱ”が付きました。
この先では”アッセ放射性廃棄物処分場”と呼んでいきます。

1967年から1978年まで、地下750メートルから500メートルにある岩塩を掘ったあとの空洞に、キャスクで126,000本という膨大な数の低・中レベル放射性廃棄物が運び込まれました。
1979年からは、高レベル放射性廃棄物の処分研究も行いました。近い将来、高レベル放射性廃棄物も含めた最終処分場にしたかったのです。

話を少し戻して、なぜ、岩塩鉱山跡を最終処分場にしようと考えたのかを説明しておきましょう。
実は、当時の”科学的知見”では、「太古の時代に海から切り離され湖になり、その底に塩が堆積した岩塩層は、地層が安定している上に、水が入り込みにくい」という常識がありました。
岩塩層は放射性廃棄物の最終処分場に最適とされていたのです。実際、1957年には、米国科学アカデミーが、岩塩層に処分場を作るよう勧告したほどです。

稼働を始めたアッセ放射性廃棄物処分場。世界初の最終処分場になるはずでした。

しかし20年もしないうちに、安定しているはずだった岩塩の壁や天井に無数の亀裂が走ったのです。地殻変動で地層が動いたせいです。
1988年には地下水の流入が確認され、現在では毎日1万2千リットルもの地下水が流入しています。

いったん運び込まれたキャスクを取り出す術はありません。最終処分場ですから、取り出す想定なんてしてないのです。
また、荒っぽい扱いをしていたため、一部のキャスクは壊れ、強い放射線が出ています。近づくことすらできません。地下水によるキャスクの腐食も始まっていて、放射性物質が溶け出し、汚染水となっています。

処分場としては1994年に閉鎖されましたが、いまだに岩塩の壁に入ったひび割れを埋めようと、コンクリートを流し込む虚しい作業が続いています。汚染水をポンプでより深い地下へ送り出すだけの対症療法も、どこまで効果があるのか分かりません。しかし、やらなければ汚染水があふれ出す恐れがあるのです。そういった作業に何百万ユーロもの資金が注ぎ込まれています。

1960年代、ドイツは反省しました。「そもそも原発を使い始める時から処分場のことを考えるべきだった」と。それがアッセ放射性廃棄物処分場の出発点です。
しかし、その結果、作られた最終処分場は、役目を果たすどころか、未来に対して大きなツケを残し続けています。

「最終処分場を作れる場所はあるのか?」「10万年以上、地殻変動や自然災害の影響を受けない場所はあるのか?」。その答えが”否”だったからこそ、ドイツは脱原発を決意したのです。「もうこれ以上、放射性廃棄物を増やしてはいけない」と。
ドイツが福島第1事故の後、いち早く完全脱原発を宣言したのには、アッセでの失敗も大きく影響しています。

アッセの失敗は、単に場所の選択を誤ったというだけでは済みません。閉鎖後の後日談と言うには、あまりに重大な問題が発生しています。

アッセ放射性廃棄物処分場には、プルトニウムも保管されていたのですが、2009年8月になって、その量が間違っていたと発表されました。9.6kgから約3倍の28kgに訂正されたのです。プルトニウムは、約1kgで高性能TNT火薬に換算して20キロトンに匹敵する核爆発を起こせます。ということは、水浸しの岩塩鉱山の廃鉱に、原爆30発分近いプルトニウムが埋まっていることになります。

もう一つ、アッセ周辺で白血病・甲状腺ガンが顕著に増加というニュースが届いています。【ZDFニュース 2010年11月】
大気の汚染によるものなのか、地下水の汚染によるものなのかは明らかになっていませんが、放射性物質による環境汚染が進んでいるのは間違いないでしょう。

今ある放射性廃棄物をどうするのかだけでも、こんなにたくさんの、そして重大な問題が起きています。
もちろんドイツだけの話ではありません。アメリカもフランスも、最終処分場問題では右往左往です。
フィンランドのオンカロが、アッセの二の轍を踏まないよう祈るばかりです。

日本はどうでしょうか?
世界に名高い火山国・地震国ですから、最終処分場の適地はどこにもありません。そのことが分かっていて、この国で原発を推し進めた政府と電力会社には重大な責任があります。
ところが、福島第1で、あれだけの事故を起こしながら、政府と電力会社は虎視眈々と、いや、今や堂々と原発の再稼働を推し進めようとしています。そのまま処分するだけでも大変な使用済み核燃料を再処理にして、さらに危険な核廃棄物を生みだそうとしています。
「日本人は歴史から学ばないのか!?」
海外からそう見られるのも当然です。

総理・閣僚の靖国神社参拝や従軍慰安婦問題での居直りなどまで言及すると話が広がりすぎかも知れませんが、私たちは歴史から学ぶ姿勢を取り戻さなくてはいけません。
福島第1は、たった3年前に起きた出来事で、今も進行形で歴史に刻まれている人類史上に残る大事故です。その恐怖と教訓を忘れてはならないし、この日本に暮らす私たちこそが、世界の脱原発の先頭に立つことが求められているのです。

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