原発と経済(2):もともと安い電力なんて探していない

次は、東京電力をはじめとする電力会社というものについてです。
電力会社は、口を揃えて「利用者にとって、もっとも安くて品質の高い電力を提供するために、原子力発電を選択したし、これからも原発は必要だ」と言いますが、本当でしょうか?
まず、日本の電力会社は地域ごとに完全な独占体制になっています。
たとえば、東京電力の管内で東京電力以外の電気で生活をしている人はいませんし、不可能です(自家発電の山小屋などを除く)。
産業用電力は、建前上は自由化されていますが、実際に地域独占以外の電力会社から電気を買っている量は3.5%に過ぎません。それも大口の利用者が中心ですから、自由化を活用している企業の数は、ごくわずかということになります。
日本では、電力会社が自分の都合で電気料金を決定できます。
それを強く支えているのが『総括原価方式』。「電力会社が電気の供給に必要な年間費用を事前に見積もり、それを回収できるように料金を決めるしくみ」です。
競争がない上に総括原価方式で守られていたら、絶対に損はありません。3.11以降、電力料金の値上げに対する強い反発があり、この間、赤字を計上している電力会社がありますが、基本的に電力会社が赤字を出すことはあり得ないのです。どんなに経費をかけても、全部、電力料金として利用者に転嫁できるわけですから。
これって企業?これって資本主義?って、誰だって思います。しかし、それが現状なのです。
ですから電力会社は、もともと安い電力を供給しようなんて考えていません。競争がない上に、行政や第三者機関の監視もありませんから、安くする必要がないのです。
巨大投資(原発の建設が典型例)をして、その経費を利用者に押しつけ、またまた次の巨大投資へという最悪の循環を繰り返しています。その合間で、自分たちが太っていくこと。それが総てです。時代遅れの拡大再生産の悪しき典型と言えるでしょう。
電力会社の合同出資により運営されている電力中央研究所の資料を見てみましょう。
家庭用の電気代は、アメリカの2倍、韓国の3倍。産業用では、アメリカ、韓国の2.2倍です。
主たる原因は、総括原価方式に間違いありません。経費かけ放題、コスト意識不要ですから。
さて、東京電力は、2012年9月1日に家庭用電気料金を8.46%値上げしました。しかし、3.11以降、電気料金は上がっていなかったのかという、これが違うのです。
<電気料金=基本料金+電力使用料金+燃料調整費+消費税>が、日本の電気料金の計算式。この内、2012年9月1日の値上げに含まれていたのは”基本料金”と”電力使用料金”です。
一つ前の記事で指摘した、天然ガスを高すぎる値段で買っていることによる東電の支出は、”燃料調整費”として、いわば自動的に値上げされていたのです。
実際に、2012年4月のモデル家庭の電気代は、1年前と比べて600円もアップしていました。燃料調整費の値上げについては、政府の認可すら不要。電力会社の采配ひとつで電気料金を変えることができるのです。
では、8.46%の値上げは何だったのか?
東京電力は「火力発電の燃料費などの大幅な増加」だと説明しています。これは明らかな嘘です。燃料費の増加は、燃料調整費としてすでに参入済みでした。
8.46%は、動いていない原発の減価償却費や保守費、賠償費用や事故収束費用がかさんだ分です。
そして、もう一つ重要なことをお伝えしましょう。
2011年9月、第三者委員会(東京電力に関する経営・財務調査委員会)は、「東電は過去10年間で実際の原価より6186億円もコストを多く見積もり、それを基に電気料金を決めていた」と、東電の総括原価方式の運用に不正があると指摘しました。
この話がいつの間にかうやむやになってしまったのは、東電が総括原価方式の具体的データの公表を固く拒んだからです。
経費を電気料金に転嫁できる総括原価方式。おまけに、その”原価”を公表しないとなったら、すべてが東電の手のひらの上ということになってしまいます。不正の暴きようすらありません。
東電がもともと安い電力なんか探していなかったのは明白。逆に、不当に高い電力を売りつけていたのです。
ここまで、東電を中心に話を進めてきましたが、他の電力会社も五十歩百歩です。もちろん、総括原価方式はすべての電力会社に適用されています。
とにかく、総括原価方式を廃止し、発送電分離を分離することです。送電会社は、安くて質の高い発電会社から電力を買います。利用者は、サービスと価格によって送電会社を選択するわけです。
電気料金は大きく下がるでしょう。
その時、事故対応や廃炉に要する経費、使用済み核燃料の処分まで考えたら、明らかにコストの高い原子力発電が生き残る道はありません。

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