除染考(3):そもそも除染は必要なのか?

当ブログをはじめ、多くの人たちが多くの場所で指摘している通り、高濃度汚染地域では、除染は核物質を拡散するだけで、効果は乏しいものです。

チェルノブイリでは、立ち入り禁止区域になっている半径30キロの「ゾーン」の中では、除染は行わず、放射性物質の野生生物や環境への影響を研究することに専念しています。除染したところで、とうてい人が住める環境にはならないからです。
「ゾーン」の外では、今も一部で除染作業が続いているようですが、決定的な効果を上げるような新技術はありません。農地では、当初、土の入れ替えによる除染を試みました。しかし、あまりに広大な面積が対象となることから、除染をあきらめ、カリウムを撒くことで、植物が吸収する放射性セシウムの量を減らすという対策に変更しました。

福島、いや日本ではどうすべきなのでしょうか…
環境省のホームページを見ると、「計画的避難区域」と「警戒区域」を合わせて『除染特別地域』として、当面の除染を進めようとしています。このエリア=20ミリシーベルト/年を超える地域です。
さらに、福島県だけでなく、宮城県、岩手県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県でも広い範囲が『汚染状況重点調査地域』に指定されています。数字的に言えば、1ミリシーベルト/年から20ミリシーベルト/年のエリアです。自治体が除染を計画すれば国から経済的支援を受けられる。これが『汚染状況重点調査地域』です。実に104市町村に及びます。

今、巨額の税金を投入して、『除染特別地域』の除染を進めようとしていますが、これが、「効果は上がらない」「手抜き横行」「労働者の賃金ピンハネ」というひどい事になっています。
『除染特別地域』は、今現在、人が住めない地域です。ここでの除染が、「帰還」と深く結びついていることは言うまでもありません。しかし、線量を下げられなければ、帰還どころではありません。また、仮に住宅の周りだけある程度、除染できたとしても、野山や山林はどうするのか… そこから流れ出る放射性物質を含む水にどう対応するのか… だいたい「放射線量が高いから山に入ってはいけない」と子どもたちに何十年も言い続けのでしょうか。そこは決して安全な場所ではありません。

フクシマの地元で、この「除染+帰還」という危険な流れを汚染地域で推し進めているのが地方議員たちです。
敢えて言います。地方議員を信用してはいけません!ごく一部の議員を除けば、票田が失われるのを恐れているだけなのです。住民の命や健康よりも、自分の地位の確保だけを考えていると言って間違いありません。

今、除染を重点的に進めるべきなのは、1ミリシーベルト/年から5ミリシーベルト/年の地域。ここでは、避難や疎開の権利も認められるべきです。
5ミリシーベルト/年以上は無条件に避難すべき。
20ミリシーベルト/年以上は、当面放置して、数十年単位で様子を見るしかありません。冷酷なようですが、これが原子力事故なのです。

埼玉県加須市の旧騎西高校に集団で避難していた双葉町。井戸川町長が、結局、辞任に追い込まれました。
その背景には「除染+帰還」の問題が横たわっています。

井戸川町長の主張は、「放射能不安が全くない地域に“仮の町”を」「7千人の全住民が住め、仕事も担保された町を」という、きわめて真っ当なものでした。しかし、町議会の主流派は、「まず、町役場を旧騎西高校から福島県内に戻すべきだ」と。

結局、この3月には、町役場をいわき市に移すことが決まり、新町役場を中心に学校などを再建し、“仮の町”を建設しようという流れになっています。
しかし、いわき市の空間線量を見ると、1ミリシーベルト/年に相当する0.23マイクロシーベルト/時を越える場所が、まだまだたくさんあります。
まともに線量を測っていない山林も心配です。福島第1から250㎞離れた加須市から、60㎞のいわき市に戻るわけですから、食べ物や水なども、心配するなという方が無理なのです。

「放射能不安が全くない地域に“仮の町”を」という井戸川町長の当然とも思える主張は、潰されてしまいました。

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