2万年前の日本列島 10万年後の日本列島


上の地図は2万年前の日本列島の姿。細い線は現在の海岸線です。日本列島が大きく動いていることが分かります。
2万年前と言えば縄文時代以前。しかし、この列島には、すでに人が暮らしていました。それを「遠い昔」と呼ぶのか「たった2万年前」と呼ぶのかは、主に文学的な問題でした。核廃棄物が抱える巨大な闇が明らかにされるまでは…

この地図をじっくりと眺めて、今までの当ブログの主張を一部修正する必要があると気がつきました。新たな結論は、「日本には放射性廃棄物の最終処分場を作る場所はない」ということです。
再処理をしようがしまいが、原発が動いている限り、高濃度の放射性廃棄物が生まれ続けます。これまで「原発賛成派であろうが、反対派であろうが、最終処分場の問題を避けて通ることはできない」と主張してきましたが、実は最終処分場の設置・建設自体が不可能なのです。少なくとも、日本列島では。

再処理工場から出てくる高線量放射性廃棄物は、ガラス固化体という形です。原発から出た使用済み核燃料から、プルトニウム239とウラン235を可能な限り取り除いて、ガラスで固めたものです。濃縮してますから、セシウム137やストロンチウム90といった核分裂生成物や、アメリシウムやネプツニウムといった超ウラン元素の濃度は、元の使用済み核燃料よりも、ずっと高くなっています。核分裂生成物も超ウラン元素も、危険極まりない放射性物質であることは言うまでもありません。このガラス固化体は、当然、強い熱と放射線を発します。出来てから数年は、近づいただけで死に至るという恐ろしい代物です。

一方、再処理をしない直接処分ではどうでしょうか?
この場合、高線量放射性廃棄物とは使用済み核燃料そのもの。これは、数年間水の中で冷やし続けないと、みずからが発する崩壊熱で溶け出してしまい、臨界に達する恐れがあるという、これまた恐ろしい代物。臨界になれば、大量の熱と放射線が発せられ、一大事となります。

ガラス固化体にしても、使用済み核燃料にしても、環境に悪影響を及ぼさないレベルにまで放射線量が下がるのに、十万年以上かかると言われています。
その時まで、今の人類が生きながらえるのだろうか?放射性廃棄物の危険性を語り継ぐことができるのだろうか?
世界に先駆けて最終処分場を建設し、その本格稼働を前にしているフィンランドから問題提起したのが、映画『100000万年後の安全でした。

話を地図に戻しましょう。
2万年前と比べただけで日本列島は大きく動いています。ゆっくりとした小さな陸の動きは、やがて大きな歪みを生み、陸地を大きく動かします。大きく陸地が動く時、必ず大地震が発生します。
上の地図を見ただけで、たった2万年の間に日本列島が、どれほどの大地震に見舞われてきたのか、大地がどれほど動いたのか、想像がつきます。また、大地が動けば、そこにひび割れが入ります。粘土を強くねじった時と同じです。それが活断層。活断層は、新たな地震で陸地が動く起点になります。日本中いたるところに活断層があるというのも、この1枚の地図から十分に想像できることなのです。
2万年は、一人の人生にとっては、とても長い年月ですが、放射性廃棄物にとっても、陸地の移動にとっても、きわめて短い時間に過ぎません。2万年では放射線は十分には減らないし、2万年あれば陸地は大きく動いてしまうのです。日本列島に限って言えば、2万年の間、安定して動かない場所を特定することは不可能です。

さて、最終処分場は、別の言い方で地層処分とも言います。数十万年先まで動く可能性のない硬い地層の中に核廃棄物を埋めようとするからです。しかし、そんな場所は、この日本列島にはない。それが結論です。

原子力発電。私たちは、なんという浅はかな選択をしてしまったのでしょうか。
今出来ることは、まず、これ以上、1ベクレルたりとも放射性廃棄物を増やさないこと。そのためには、大飯原発の稼働を直ちに止め、大間原発の建設を中止すること。そして、すべての原子炉から核燃料を取り出し、廃炉決定すること。他に道はありません。

すでにある放射性廃棄物への対処は、日本学術会議が提唱している「何かかあったら取り出して他に移せる暫定保管」と「廃棄物の総量管理」しかないでしょう。苦渋の選択ですが、それが原子力発電の大きなツケなのです。

日本学術会議と言えば、良くも悪しくも日本のアカデミズムの頂点。その学術会議が、報告書の中で「地震や火山活動が活発な日本では、処分場の安定性が数万年以上、維持されるかどうかは科学的に予測不可能」と明言しています。
重く受け止める必要があると同時に、冒頭の地図を見て頂ければ、それは誰もがたどり着く結論でもあります。

参考:『高レベル放射性廃棄物の処分について』日本学術会議

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