世界の原子力利権と日本-1『ウラン採掘総元締めの予想外』

原子力の問題を語る時、原発だけを取り上げてもすべてを語ることはできません。ウラン採掘から、使用済み核燃料を含む放射性廃棄物の行方まで、核物質の動き全体を考える必要があります。
そこで3回に分けて、国境を越えて地球を駆け巡る核物質を追って行こうと思います。
完全脱原発なのか脱原発依存なのか… 再稼働は許されるのか… 議論が高まる中、懲りずに世界の原子力利権構造にドップリと浸かり、大きな役割を果たし続けている日本の原子力産業の姿を浮き彫りにする必要があるからです。

●ロイターの報道
今年3月26日。ロイターが今までにない視点から福島第1の事故の影響について伝えています。

『Cameco sees restart of some Japan reactors soon』【REUTERS】
『全訳』【星の金貨プロジェクト】

見出しを直訳すると、「カメコ(Cameco)は、日本の幾つかの原子炉がまもなく再稼働すると予想している」。
カメコとは、カナダに本拠地を置く世界有数の核燃料供給企業で、ウラン採掘から精製、転換まで幅広く手がけています。
ロイター報道の主眼点は以下の通りです。
1. カメコは、3.11以降、日本の電力会社に対して余っているウラン燃料の買い取りを提案。
2. これに対して、いくつかの電力会社はウラン燃料の納品の延期を依頼してきたが、在庫を減らしたり、契約済みの分について数量を減らすよう求めてきた会社は一社もなかった。

カメコとしては、原発過酷事故を起こした日本は、脱原発に大きく舵を切るか、少なくともしばらくは原発は稼働できないと読んだのでしょう。そこで早々に、ウラン燃料の返品買い取りを提案。これに対して、かたくなに原子力発電にしがみつく日本の電力会社は、一切応じることがなかったと。
おそらく価格的にはよい条件ではなかったのでしょう。しかし、余っているウラン燃料を買ってもらえば、天然ガスの購入資金や再生可能エネルギーの開発に充てたりできたはずです。「原発が止まっているから発電コストが高く付く。だから値上げ」と言い続けるなら、まず、不要なウラン燃料を買い取ってもらうべきです。これは今からでも遅くないと思います。

報道はカメコのCEOであるティム・ギツェルの発言に基づくものでした。記事の中で、ギツェルはもう一つ重要なことを語っています。

1. カメコのウラン採掘計画の幾つかは、日本企業との提携で進められている。
2. この提携についても継続の可否を打診したが、撤退を申し出た会社はなかった。従って、日本からのウラン採掘への投資は継続される。
3. 出光興産は、2013年後半に採掘を開始する予定のカナダ・サスカチュワン州にあるカメコのシガーレイク・ウラン鉱山の株式8パーセントの株式を保有。東京電力は5%保有し続けている。

ウラン採掘の総元締めとも言えるカメコのCEO、ティム・ギツェルの予想は、日本の原子力産業は「ウラン燃料の返品買い取りを求めるだろう」そして「ウラン採掘計画からは撤退するだろう」というものでした。
その予想は、見事に裏切られました。日本の原子力産業は、カメコも驚くような対応をしたのです。
まさに「懲りない原子力村」。醜い姿が海外の報道から浮き彫りにされた形です。

ドイツでは国の脱原発宣言を受けて、大手電機メーカーのシーメンスが原発事業からの完全撤退を表明しました。これまでドイツ国内外を問わず原発関連で多くの利益を上げてきた企業が180度方向転換。未来を見据えての判断です。
過酷事故を起こした日本で、いまだに完全脱原発に踏み出せないでいる私たちは、恥ずべきであり、深く反省すべきなのでしょう。

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