お茶の一件に始まった思わぬ植物や農作物の放射能汚染。
特に空間線量の高くない場所でも、植物の特性や成長期との関係で一気に放射性物質が濃縮されることを私たちは知りました。お茶の木は、新芽を出す直前に、葉から大量の放射性シセウムを栄養分のカリウムと間違って吸収していたと考えられます。
思わぬところから忍び寄ってきた放射性物質の恐怖。
この件に関して、いくつか新しい情報が入ってきました。
●スギ花粉
『スギ花粉の放射能汚染について』【WINEPブログ】
このブログでは、独自に杉の雄しべのセシウム137を計測し、懸念を表明しています。非常に意味のある取り組みだと思います。
読売新聞10/21の記事『スギ花粉のセシウム調査、林野庁が来月にも実施』によれば、林野庁も動き出すようです。
しかし、この記事の中に、たいへんな認識違いがありました。
「花粉症の人は、普段と同じ対策をしていれば、それほど心配する必要はない」。専門家として意見を述べている環境科学技術研究所の大桃洋一郎特別顧問の発言です。
花粉に乗った放射性セシウムを吸い込むのは、花粉症の患者だけではありません。春先になれば、誰もが吸い込んでいるのです。私は患者なので、よく分かるのですが、花粉症の患者には、ある意味で、花粉が見えます。「今日はたくさん飛んでそうだな」とか。危なそうな日にはマスクをします。だから私たち花粉症患者には、花粉に放射性セシウムが乗ってくる絵がはっきりと思い浮かびます。
このままだと、花粉症と無関係な人たちは、まったく無防備のまま、放射性の花粉を吸い込んでしまうでしょう。これは恐怖です。
一方、その季節、花粉症の患者の鼻腔内やまぶたの裏側の粘膜は、炎症を起こしている状態です。そういった場所から、より多くの放射性セシウムが体内に入り込む可能性があるのかどうか… これもまた恐怖です。
実際、スギの花粉は200キロ以上飛ぶと言われます。これまでのエアロゾルとかホット・パーティクルといったチリや火山灰のような形状とは違った飛散の仕方をするでしょう。放射性セシウムから見れば、スギ花粉は、あらたな、そして大きな船のようなものになる可能性が高いのです。
果たして、有効な対策はありうるのか… 春が来るのが怖いというのが、正直なところです。
スギやヒノキに次いで、花粉症の原因となるケヤキも要注意。今はソースを明かせないのですが、東京多摩地区で、ケヤキからだけ、突出した放射性セシウムの値を検出した例があります。
●クリとドングリ
クリは、カリウムが豊富です。と言うことは、放射性セシウムが蓄積しやすい。前から危ないとは思っていたのですが、案の定でした。
(財)食品流通構造改善促進機構が発表しているデータをもとに、一覧表を作成してみました。当ブログ独自の基準で、セシウム137と134の合計で100Bq/kgを越えたものを赤字で示しています。
クリの親戚のような、ドングリはどうでしょうか?
都内のある大学で、農学部の研究者がキャンパス内の銀杏とドングリ(3種類)を調べたそうです(これも事情があって今はソース情報明かせず)。結果は、クヌギのドングリにだけ、放射性セシウムが高濃度に蓄積していました。
「植物はよ―分からん!」とは、この研究者の口を突いて出た言葉。植物における放射性物質の蓄積、濃縮は、分かっていないことがたくさんあるのです。
しかし、「人間はドングリは食べないから関係ない」と見過ごすわけにはいきません。たとえば、夕方になると街路樹に集まって、ギャーギャーとうるさいムクドリ。木の実が大好物です。群れをなして生活しますので、その巣の近くは、糞によって放射性セシウムのホットスポットになる可能性があるのです。
ドングリにも野鳥にも、なんの罪もありません。しかし、思わぬところに、思わぬ形で放射性物質が集積するのです。
まだまだ、いろいろなところで、いろいろなことが起きるでしょう。本当に原子力事故というのは、計り知れない恐怖をもたらします。分かっていたつもりでしたが、身に浸みています。原発はいりません。
しかし、今広まりつつある汚染に対して、立ち向かわざるを得ないのも事実。その時に武器になるのは、これまでに蓄積してきた知識と大胆な想像力です。農業関係者、農学研究者、植物学研究者には、いっそうの努力をお願いしたいものです。