自然放射線を正しく知る(2)

大地には、地球創生期にできた天然放射性物質が、わずかに含まれています。
主なものは、
カリウム40(半減期:12.5億年)
ウラン238(半減期:44億6千万年)とその崩壊過程で生成される核種【ウラン系列】
トリウム232(半減期:140億年)をその崩壊過程で生成される核種【トリウム系列】
です。
これらは、大地の中(多くは岩石の中)から放射線を発する場合もありますし、建材などにも含まれているので、私たちは建物からも若干の外部被ばくを受けています。大地+建物からの合計が世界平均で0.4ミリシーベルト/年ほど。
日本国内には、大地+建物からの被ばく線量に対応するデータありません。使えそうなデータは、「宇宙、大地からの放射線と食物摂取によって受ける放射線量」です。
一番低い神奈川県で0.91ミリシーベルト/年、一番高い岐阜県で1.19ミリシーベルト/年という値に。線量の違いは、主に大地からの放射線量の違いによります。
天然放射性物質は花こう岩に多く含まれているため、花こう岩地帯では線量が上がります。日本では、西日本に花こう岩が多いので、大地からの放射線量は、概ね、西高東低の傾向を見せます。さらに、関東地方では岩盤の上を関東ローム層という赤土の層が厚く覆っているため自然放射線のレベルが低くなっています。

三つの天然放射性物質(群)は、いずれも内部被ばくにも関与します。

まず、カリウム40から見ていきましょう。
カリウム40は、地球上にあるカリウムの中に0.0117%含まれる放射性物質です。海の中にあるカリウムも、岩石に含まれるカリウムも、生体内にあるカリウムも、皆、その0.0117%はカリウム40です。サプリメントのカリウム剤であっても、0.0117%はカリウム40です。
一割ほどがガンマ線を出して、空間線量に影響を及ぼし、外部被ばくに関わります。残りの9割はベータ線を出して、カルシウム40に変わります。ベータ線は、遠くまで飛ばないので、この分は、外部被ばくよりも内部被ばくを考える必要があります。

カリウムは、体内に入ると血中や筋組織などを中心に、ほぼ平均的に全身に広がります。人体にとっての必須ミネラルの一つなので、健康体であれば、世界中の誰もがほぼ同じ濃度で体内に持っています(生活習慣や食文化の違いで若干の過不足がある)。しかし、どこまで行っても、カリウムの0.0117%はカリウム40で、体重60kgの日本人では、4000ベクレルのカリウム40が体内にあります。もちろん、これは少ない方が良いのですが、減らそうとするとカリウム欠乏症になってしまいますので、できません。

今回の福島第1の事故で、大量に放出されたセシウム137は、カリウムと似た性質を持っているため、体内に吸収されやすい放射性物質です。私たちの体は、セシウム137をカリウムとほとんど同じように扱いますので、仮に、2000ベクレルのセシウム137を体内に溜め込んでしまうと、カリウム40の濃度が、ほぼ1.5倍になったのと同じだけのベータ線による内部被ばくを受けるのです。

厚生労働省が、事故後に慌てて決めた暫定基準値によると、放射性セシウム(134と137の合計)は500ベクレル/kg(野菜や肉、それに卵や魚などそのほかの食品)です。
体内にあるカリウム40の4000ベクレルに比べたら随分低いから安心!ではありません。ここに誤魔化しが隠されているのです。4000ベクレルは体重60kgに対してです。カリウム40の濃度を1kg当たりで見たら、67ベクレル/kg。仮にセシウム137が100ベクレル/kg含まれる食品を持続的に食べ続けたらどうなるでしょう。<カリウム40+セシウム137>による内部被ばく量は、アッと言う間に跳ね上がります。

(続く)

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