日本の原発から一年間に出る使用済み核燃料は1000トン~1300トン。この中には、核分裂せずに残ったウラン235の他に、超ウラン元素(プルトニウム239・アメリシウム241など)と核分裂生成物(セシウム137・ストロンチウム90など)がたくさん含まれています。いずれも危険極まりない放射性物質である事は言うまでもありません。
この使用済み核燃料が、どこへどう運ばれているのかを追ってみました。
まず第一の行き先は、国内の再処理工場です。
日本で営業運転中の再処理工場は東海再処理施設しかありません。これは実験的なプラントなので、年間200トンほどの処理能力しかありません。貯蔵能力も限界のようで、ここ数年は、東海村への使用済み核燃料輸送は、ほとんど行われていません。
もう一つは、試運転中の六カ所村再処理工場(反対運動が続いています)。処理能力は年回最大800トンです。ここの使用済み燃料プールには3000トンの貯蔵ができますが、運転開始前なのに、すでに満杯。今年に入ってからは、一切の使用済み核燃料を受け入れていません。
なお、日本で使用済み核燃料を輸送する場合、トラックによる陸上輸送と船舶による海上輸送を併用します。警備は警察と警備会社で、自衛隊は動員しません。
文科省のサイトに、高速道路での核燃料物質(使用済み核燃料と思われる)の陸上輸送の写真が掲載されています。物々しい警戒態勢と言うよりは、普通の風景の中をとてつもなく危険な物質が移動している姿に底知れぬ恐怖感を感じます。
次は、使用済み核燃料の海外への輸送です。行き先は、フランスのラ・アーグとイギリスのセラフィールドでした。過去形にしたのは、どちらも契約量のすべてを数年前までに運び終えており、現在は、再処理を終えたウラン235、プルトニウム239とそれを原料にして作ったMOX燃料(プルサーマル用燃料)、ガラスで固められた高レベル放射性物質(ガラス固化体)の日本への返却が続けられています。
前の記事で書いた「セラフィールド(イギリス)のMOX燃料工場の閉鎖」は、日本から来た使用済み核燃料の再処理がほぼ終わり、MOX燃料の製造も完了するということを意味しているのでしょう。少なくともMOX燃料工場の客は、日本だけだったわけですから(再処理工場の方は、スイスなども顧客のようですが、そのスイスも「脱原発」宣言。再処理工場も先行きは見えなくなりそう)。
日欧間の核物質輸送では主に英国籍の使用済核燃料輸送船が使われています。英国の警備会社が雇った武装した警備員が乗り込んでおり、船には機関砲や武装高速艇を搭載しているそうです。ルートはパナマ運河経由なので、カリブ海諸国から「安全性に問題がある」と非難されています。
さて、使用済み核燃料の行き先をもう一度見直してみましょう。海外での再処理は契約終了。国内の再処理工場は満杯。じゃあ、どこへ?
各原発が山のように溜め込んでるのが現状です。その総量は9000トン近くになるようです。
日本中の原子炉が通常運転を続けると、年間1000トンから1300トンの使用済み核燃料が出てきます。六ヶ所村再処理工場の処理能力は年間800トン。誰が計算しても計算が合いません。
どんどん溜まる危険な使用済み核燃料。トイレのないマンションと揶揄される所以です。
加えて、再処理工場は、原子炉1機に比べての1万倍の放射性物質を出すなど、大きな問題を抱えています。
長くなりそうなので、再処理工場の詳細については、別な記事で書くことにしますが、とりあえず、使用済み核燃料の行き先を追っただけでも、問題山積なのはお分かりいただけたかと思います。