実りの秋はどうなるのか…

放射性セシウムに汚染された肉牛の問題がとどまるところを知りません。日本一の地域ブランド=松阪牛が、出荷直前には宮城県産の稲わらで霜降り肉を増やしていたというのもショックでしたが、経済活動が絡んでしまうと、自然界の食物連鎖以上に複雑な経路で、放射性物質の汚染が広がっていくのだということを痛感しました。

今は、日本中が肉牛問題でてんてこ舞いの状態ですが、この先はどうなっていくのでしょうか?
まず、肉牛や乳牛では、すでに牧草の汚染が大きな問題としてクローズアップされています。農水省は5月1日の時点で、「牧草の禁止地域設定へ 16都県に調査依頼」というアクションを起こしていますが、5月18日に宮城県の一部で放牧禁止が発令されたというニュース以来、詳細が不明です。
また、豚肉や鶏肉、鶏卵、牛乳の汚染は今のところ心配ないとされていますが、ストロンチウム90のデータが出ていないので安心はできません。過去の原子力事故では、牧草→乳牛→牛乳→人間というルートでストロンチウム90による内部被ばくが進みました。グズグズしている間に失われるのは、畜産農家の暮らしと消費者の健康だということを、政治家も役人も、いまだに理解していないようです。

牛の話に戻ります。稲わらは駄目、牧草も危ないとなった時、アメリカから輸入した遺伝子組み替え100%のトウモロコシを中心とする配合飼料で育てていくしかないのでしょう。その牛は和牛は呼べません。だいたい、年間を通して牛をまったく牛舎から出さずに育てることは難しいはずです。何をどうすれば良いのか… 頭を抱える畜産農家の姿はテレビで伝えられているよりも、ずっと深刻なはずです。

稲そのものはどうででしょうか。「稲わらが駄目だったら、それが積まれていた水田も駄目だ」というのが当然の推測です。稲わらには特にスポンジのように汚染された水を吸い込み放射性セシウムを濃縮するメカニズムがあったとされますが、だからといって水田が安全とは言えません。現在までに、土壌中の放射性セシウムが5000Bq/kgを越えた水田では作付け制限が実施されていますが、かなり限られたエリアで、これに該当したのは、福島県飯舘村、大玉村、川俣町の一部などです。
宮城県などに広がっている汚染された稲わらが積まれていた水田は、今、青田から出穂の時期を迎えているはず。その稲がどの程度の放射性物質を含んでいるのか、全面的な情報公開が求められるところです。

稲わらや牛糞から作る堆肥も使用禁止の状態になっています。これは、被災地域の農業にとって本当に致命的で、自家製あるいは地場産の堆肥を中心に有機農業を目指してきた良心的な農家を直撃しています。すでに汚染地域の農地では、化学肥料でカリウムを大量に散布して、作物が吸収する放射性セシウムの量を少しでも減らそうという対策が始まっています。もはや有機農業を語ることすらできない状況です。

土壌汚染のひどい地域では、ハウス栽培であっても、しばらくの間、人工土壌を使用して、化学肥料を点滴で与える野菜工場のようなやりかたでしか作れなくなるでしょう。そこには、地域で作り上げてきた地場産野菜のノウハウは生かしようがありません。コストが上がり、地域の特徴が消え、美味しくない… 良いことは一切ありません。

山に目を移せば、東北地方と関東北部のかなりのエリアでキノコを採ることはできないでしょう。キノコは特にセシウムの吸収能力が高く、ドイツでは今でも、チェルノブイリ事故の影響で、野生のキノコを食べて高濃度のセシウム137に汚染されたイノシシが捕獲されます。25年も経っているのに…
岩手、山形、福島はマツタケの産地として名高いところ。おそらく、しばらくの間は無理でしょう。さらに地元で秋の味覚として愛さてきた雑タケ(天然に育つ様々なキノコ)にも、手を出せない状況になることは間違いありません。
キノコについては、すでに明らかになっているデータがあります。筑波大学の校内で春に生えた天然キノコです。東北地方で食用にされるツチグリが示した放射性セシウム=22490Bq/kgは、厚労省が福島第1の事故の後に慌ててまとめた「食品中の放射性物質に関する暫定基準値」=500Bq/kg(野菜・放射性セシウム)の実に45倍です。

海を見れば、いまだにオキアミの放射性物質の検査が行われていないことが気がかりでなりません。秋の海の幸の代表とも言える秋刀魚は、オキアミを追って、北海道沖から三陸沖、そして福島沖、銚子沖へと下ってきます。もし、福島沖のオキアミがセシウム137やストロンチウム90に汚染されていたら、ひとたまりもないでしょう(すでに北海道沖の秋刀魚から少量の放射性セシウムを検出)。もちろん、秋刀魚の回遊ルートを人為的に変えることは出来ませんが、状況が予測できれば、漁場を変えるとか、他の漁に切り替えるとか、少しでも対策を講じることができるはずです。ここでもまた、泥縄対応で大混乱が起きるのでしょうか。

実りの秋を前に、まったく見通しの立たない暗い話ばかりになってしまい、申し訳ないと思っています。しかしこれが、今、私たちが直面している現実です。少しでも早く情報が公開されれば、多少ですが対策の打ちようがあります。とにかく、情報の隠蔽は最悪です。そしてこの記事に列挙した私の危惧が、一部でもよいから杞憂に過ぎなかったと言われることを望むのみです。

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