実は、原子番号92のウランは自然界でもっとも重い元素で、原子番号93以降の原子は「存在しうるが、自然界には存在しない」というもの。これらを超ウラン元素と呼んでいます。
超ウラン元素は、総じて寿命が短く、短時間の間に崩壊して、別な元素(物質)に変わってしまいます。超ウラン元素の代表格とも言えるプルトニウム239の半減期は2万4千年。2万年以上と聞くと長く感じるかも知れませんが、46億年という地球の歴史から見れば一瞬に過ぎません。仮に地球誕生時に、ある程度の量のプルトニウム239があったとしても、それはもうどこにも残っていません。
しかし、私たち人間、いや、生物の一生から考えれば2万4千年は、とてつもなく長い時間です。「放射線(アルファ線)を出し続けるプルトニウム239は、2万4千年経っても、半分にしか減らない」。そう考えれば、絶対に作り出してはいけない物質だということがお分かりいただけると思います。
さて、超ウラン元素は、加速器や原子炉でしか作ることができません。多くの場合は、既存の原子に中性子を吸収させて作るものだからです。
世界には、理論的には存在可能でも、実際に存在が確認されていない元素を作ろうと、しのぎを削る実験物理学者たちがいます。最近も原子番号114のウンウンクアジウムの生成が話題になりました。
話を原発に戻しましょう。
燃料棒の中にできる超ウラン元素は、
ネプツニウム237(半減期=214万年)
プルトニウム238(半減期=88万年)
プルトニウム239(半減期=2万4千年)
アメリシウム-241(半減期=433年)
などです(他にキュリウムなど)。
プルトニウム239の場合は、連鎖的核分裂反応で余った中性子をウラン238が吸収して生成されます。他の超ウラン元素では、ウランやプルトニウムが元になって、アルファ崩壊やベータ崩壊を繰り返す複雑な過程で生成されます。詳しくは原子力資料情報室のサイトへどうぞ。
いずれの超ウラン元素もアルファ線やベータ線を出して崩壊し、別な物質へと変わっていきます(超ウラン元素が崩壊して、別の超ウラン元素になる場合もあります)。
アルファ線とは、ヘリウムの原子核(陽子2個+中性子2個)のことで、透過力は弱いですが、エネルギーは大きく、DNAを傷つける電離作用の強さは、ガンマ線の20倍。万一、超ウラン元素を体内に取り込んでしまうと、アルファ線によって、深刻な体内被曝を受ける可能性があります。理由は、電離作用の強いことがひとつ。もう一点は、遠くまで影響が及ばない分、至近距離にあるたくさんの細胞を確実に壊してしまうからです。
福島第1の事故では、これまでにニュースになっただけで、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムの漏出が確認されています。
政府は「直ちに健康に影響が出るレベルではない」を繰り返していますが、核分裂生成物と併せて、超ウラン元素の危険性を認識し、その監視を強める必要があります。