お茶とセシウム

ここのところ、神奈川県や静岡県の新茶からセシウム137が検出されて、大きな騒ぎになっています。
福島第1から遠く離れているのに、なぜ?
多くのメディアは、地形や天気等によって、核分裂生成物がある程度の濃度のまま、遠くまで運ばれることがあると報じています。それ自体は正しいのですが、もう一つ重要な視点が必要です。

茶という植物は、たいへん効率よくセシウム137を生体内に取り込み、濃縮する能力を持っているのです。えっ?と思われる方も多いと思いますので、その仕組みを説明しましょう。

文科省の食品成分データベースで、「せんちゃ」を検索してみましょう。「表示成分選択」のところで、「無機質」「全て」にチェックを入れます。結果を表示すると、煎茶にはカリウムが豊富に含まれていることが分かります。
茶は地中や大気中からカリウムを取り込む力が、とても強いのです。そして、カリウムは人間にとっての必須ミネラルの一つ。特にアジアの人々は、遠い昔から、茶が健康に良いことを経験的に知っていました。それはカリウムが豊富だからとも言えるのです。

さて、そのカリウムとセシウム137がどう関係するのか?
実は、セシウムは化学的性質がカリウムとよく似ていて、茶の木であろうと人間であろうと、生体はカリウムとセシウムを見分けることができません。言い方を変えれば、生命を維持するために、カリウムと勘違いしてセシウムをせっせと溜め込んでしまうのです。もちろん、セシウムが放射性であろうとなかろうと関係ありません。だから、環境の中で放射性のセシウム137の濃度が少しでも高まることは、たいへん危険なのです。人間の体内に取り込まれたセシウム137は、筋肉などに蓄積し、深刻な体内被曝を引き起こす可能性があります。

この事実を見ていくと、地球上の生きものはすべて、放射性物質に対してまったく防御する力を持っていないことが分かります。一方で、太古の昔から、地上での放射線量は少しずつ減ってきていたはずです。なぜなら、どの放射性物質も放射線を放出することで、少しずつ安定した原子に変わっていくからです。例えば、ウラン235の半減期は7億年ですから、現在、地球にあるウラン235の量は7億年前と比べると半分になっています。放射性物質が減ってきたからこそ、人類が地球に登場できたのかも知れません。
ところが、その人類は、減っていくはずの放射性物質を逆に増やしてしまったのです。広島・長崎、度重なる原水爆実験、そして、原発などの原子力施設での深刻な事故。ストロンチウム90やセシウム137は本来、地球上に存在しなかった放射性物質だということも忘れてはいけません。

放射性物質は、やがて減っていくという自然の摂理を破ってしまった人類。今、原点に戻って、もう放射性物質を増やしてはいけないのだと確認し合う必要があります。

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