再度、ストロンチウム90に警戒を

相変わらず、ストロンチウム90のデータが、東電からも国からも、まったく出てきません。もっとも危険な核分裂生成物の一つと言われているのに…

ストロンチウム90の半減期は約30年。ベータ線を出して、イットリウム90になります。ベータ線とは放射線の一種で、飛び交う電子(電子線)と考えればよいでしょう。電磁波(光)の一種であるガンマ線にような透過力はなく、アルミ板1枚でも止まります。従って、外部被曝としては、放射性物質が肌に直接乗るようなことにならなれば心配はないでしょう。
一方、内部被曝を考えると深刻です。ストロンチウム90は、カルシウムと似た化学的性質を持つため、人間を含む生体は、飲食を通して体内に取り込んだストロンチウム90をカルシウムと勘違いして骨に集めてしまいます。骨の中にある骨髄には造血幹細胞が。これが分裂・分化して、赤血球や白血球、血小板になります。骨に集積したストロンチウム90と造血幹細胞の間には、アルミ板どころか紙1枚すらありません。ストロンチウム90が発するベータ線が造血幹細胞をピンポイントで痛めつけます。ストロンチウム90が白血病を生むメカニズムです。
また、一旦体内に入ってしまうと、基本的に検出不可能になってしまうという怖さもあります。例えば、ヨウ素131やセシウム137であれば、体内で崩壊する時に、ベータ線だけでなく、ガンマ線を発します。これは透過力が強いので身体の外にも飛び出してきます。一方、
ストロンチウム90が出すのはベータ線。透過力が弱いため、身体の外では放射線を検出できません従って、ストロンチウム90による内部被曝が起きているかどうかを知るには、尿や便を調べるしかありません。ただその検査も誤差が大きく、言ってみれば、ストロンチウム90による内部被曝の実態は、死んでからしか分からないのです

ストロンチウム90は、使用中の燃料棒や使用済み燃料棒に、セシウム137とほぼ同量が含まれています。しかし、チェルノブイリの時のデータを見ると、大気中や土壌から検出されたストロンチウム90の量はセシウム137よりも、大分少なくなっています。これは、ストロンチウムが比較的大気中に飛散しにくいからです。
ただ、骨に集積する分、ストロンチウム90はセシウム137の15倍危険だというデータもあります(岩波新書『原子力発電』P89参照)。

もう一つ見落としてはいけないのは、海への流出です。今のところ、私たちは、ストロンチウム90が海に流れ出しやすい物質なのかすら分かっていません。
放射性物質による大規模な海洋汚染の例としては、イギリス・セラフィールド再処理工場における垂れ流し事故がありますが、Web上でいろいろと探してみましたが、少なくとも日本語では、放射性物質の種類別の放出量・検出量など詳しい資料が見つかりません。セラフィールドは再処理工場の汚水、福島第1は燃料棒そのものからの流出ですが、参考になるデータは残されているはずです。加えて、とにかく福島第1附近の海の現状をつぶさに把握して、データを広く公開する必要があるでしょう。

残念ながら、福島第1の事故は、人類史上最悪の放射性物質による海洋汚染になるでしょう。私たちは、目の前の明日を生きるために、そして未来のために、その実態を知る必要があります。その時、ストロンチウム90のデータは不可欠です。

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