大停電と原発

「安倍晋三はブラックセールスマン」「安倍晋三は死の商人」。あちこちからこんな声が聞こえてきます。

レベル7の大事故を起こしてから2年あまり。フクシマはまったく収束していません。事故の詳しいメカニズムだってまったく分かっていません。
そんな日本の首相が、トップセールスと称して海外に出向いて原発を売り歩く。そこで事故が起きた時に、誰がどう被害を受け、誰が責任を負うのかなんて、まったくお構いなしです。
今回のトルコについて特に言うなら、日本に匹敵する地震国であることは誰もが知っているのに。

さて、視点を変えてみましょう。
今、多くの人が見落としているのが、原子力発電所は電気を作るための施設なのに、外部電源がないと暴走し、メルトダウンし、大事故を引き起こすということ。ここに、原発が持つ根本的な脆弱性の一つがあります。外からの電気がないと暴走する発電所!?まともな神経で考えれば、それ自体が変なのに。
そして、停電の起きない国は世界中どこにもありません。日本でも、トルコでも、アメリカでも停電は起きます。

福島第1の過酷事故。政府も東電も、「想定を越える規模の津波」のせいにして誤魔化そうとしていますが、実は、津波だろうと、台風だろうと、洪水だろうと関係ありません。メルトダウンの引き金を引くのは、最後は「外部電源の喪失=停電」なのです。
こう言うと、「仮に外からの電源が切れても、非常用ディーゼル発電機があるから大丈夫」という反論が来ます。しかし、福島第1で東北電力からの送電線が倒れ、同時に非常用ディーゼル発電機が津波で水をかぶったという状況は、極めて特殊な例とは言えないのです。
それを裏付けるのが、これまでに日本国内や世界中で起きた数々の大停電の記録です。

●新潟大停電
2005年12月22日~23日。
原因は、強風とそれによって煽られた雪と氷結した海水のしぶきとされています。
この時は、停電エリアに柏崎原発がたまたま含まれていませんでした。
しかしもし、柏崎原発がこの停電に巻き込まれ、荒天があと数日続いていたらどうなっていたでしょうか?
停電が始まった直後は、非常用ディーゼル発電機が稼働していたとしても、数日の内に燃料切れ。原子炉は間違いなく暴走していたでしょう。

●ブラジル大停電
2009年11月10日。
原因は暴風雨。新潟の場合と同じ想定は成り立ちます。
ブラジルは、福島第1の事故を受けて国内でのあらたな原発計画を見送る決定をしました。

●北アメリカ大停電
2003年8月14日。
荒天による送電線と樹木の接触が原因でした。
これも、停電エリア内に原発があって、荒天があと数日続いていたら、大事故の可能性がありました。

そしてアメリカ西海岸…
最近も、福島第1を思い浮かべざるを得ない事態が起きて、実際に原発が止まっていました!

1年半ほど前の2011年9月8日、米国カリフォルニア州南部で大停電が起き、サンディエゴ近郊にあるサンオンフレ原発の原子炉2基が緊急停止していたのです。

●2011年9月8日カリフォルニア州南部で大停電のニュース

●カリフォルニアの原発地図

サンディエゴ近郊と言われていますが、実はロサンゼルスにもほぼ等距離なのが一目瞭然。
「ロサンゼルスはサンオンフレの100キロ圏内」という事実をアメリカの人たちは知るべき!

さて、大停電の日…
あまり細かい情報が残されていないのですが、非常用ディーゼル発電機で危機をしのいだと見られます。
もし、非常用ディーゼルが起動しなかったら…
もし、数日間、ディーゼル燃料が届かない状況に見舞われたら…
太平洋をはさんだ反対側で、福島第1同様の原発過酷事故が起きていたに違いありません。それは、福島第1の事故から、たった半年しか経っていない時でした。

まさに綱渡り… こんなことを繰り返していたら、人類は、必ずまた原発過酷事故を引き起こします。

そして、この日本列島に暮らす私たちの果たすべき責任と役割は…
ヒロシマ・ナガサキの悲劇を経験した私たちは、核兵器廃絶に向けて、世界の最先頭に立たなくてはいけません。
フクシマの悲劇を経験した私たちは、地球上からすべての原発をなくすために、世界の最先頭に立たなくてはいけません。
そんなときに、首相が原発の「ブラックセールスマン」や「死の商人」では、お話になりません。

思いだしてみると、安倍晋三の出身校は成蹊大学。完璧な三菱財閥系です。今回、トルコでの原発セールスは三菱重工。いまだにそんなところで、世の中が決まっているのか… 落胆とともに、強い怒りをおぼえます。

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