ウラン鉱山で採掘された天然ウランが加工され、原発で使われ、最後は使用済み核燃料や放射性廃棄物になるまでを図にまとめてみました。
ウラン採掘の段階で、すでに日本の原子力産業が深く関わっているのは、前の記事で述べた通りです。採掘プロジェクトへの出資を行っていて、3.11以降も撤退していません。
●転換
精錬の次のプロセスは「転換」です。イエローケーキを六フッ化ウランに「転換」します。
なぜ、六フッ化ウランなのか?
詳しくは後述しますが、ウランを濃縮するためには、一旦、六フッ化ウランの形にする必要があるのです。
六フッ化ウランは常温では白色の粉末。水に触れると生体への毒性が強いフッ化水素を激しく発生します。56.5℃という低い温度で昇華して気体になるという性質もあります。従って六フッ化ウランの容器には厳重な防湿と密封性が必要です。
「転換」のための工場や施設は、カナダ、アメリカ、フランス、ロシア、イギリスなどにあります。ウラン鉱山を出たイエローケーキは、ある時はトレーラーで、ある時は船で危険な旅をします。
実際にアメリカでは、トレーラーの横転事故でイエローケーキを詰めたドラム缶が壊れ環境を汚染、除染を余儀なくされた事故例が複数あります。
転換工程を担う企業は、前述のカメコ(カナダ)の他、コミュレックス(フランス・アレバの子会社)、ウェスティングハウス(東芝の子会社)など。日本には転換工場はありませんが、実は東芝が深く関わっているのです。また、コミュレックスの親会社のアレバは、言わずと知れた世界最大の原子力産業。三菱重工と提携関係にあります。
●濃縮
「転換」の次に来る「濃縮」では、「低い温度で気体になる」という六フッ化ウランならではの性質を利用します。
現在、ウラン濃縮法の主流は「ガス拡散法」と「遠心分離法」。いずれも、気化したウラン化合物を使って、ウラン238とウラン235を選り分け、天然ウランには0.7%しか含まれていないウラン235の濃度を原子炉で使える4%程度にまで高めます。そのために、あらかじめ天然ウランを気化しやすい六フッ化ウランに「転換」しておく必要があるのです。
世界的に見るとウラン濃縮は、アメリカのユーセック(東電と協力関係にある)、ウレンコ、フランスのアレバ、ロシアの国営企業ロスアトム(ROSATOM)の4社が世界全体の需要の約96%をまかない、日本には六ヶ所村に小規模な濃縮施設があります。
核物質を気体の状態で扱うわけですから、濃縮工場が持つ危険性は極めて高いもの。その詳細を原子力資料情報室が明らかにしています。
『六ヶ所ウラン濃縮工場における事故災害評価』【原子力資料情報室】
濃縮工程を経て、六フッ化ウランは濃縮六フッ化ウランになります。
この時に絞り滓のように残るのが劣化ウラン。主にウラン238ですが、分離しきれなかったウラン235も0.2%ほど含みます。世界中の濃縮工場で行方の決まらない劣化ウランが溜まり続けています。もちろん六ヶ所村でも。
●再転換
「濃縮」の次は「再転換」です。濃縮六フッ化ウランを濃縮二酸化ウラン(以下、単に「二酸化ウラン」と記す)に転換します。
ここでも、なぜ二酸化ウランなのか?という疑問が出てきます。答えは融点が高いから。金属ウランの融点が1132℃なのに対して、二酸化ウランは2865℃。高温でも溶けにくいという性質から核燃料として使われるようになったのです。しかし、ひとたび事故が起きれば、二酸化ウランですら溶け出してしまう… メルトダウンは、いとも簡単に起き、とてつもない被害を及ぼすことが福島第1で証明されたのです。
話を「再転換」に戻しましょう。
世界にある再転換工場(商用)は以下の通りです。
「再転換」もまた大きな危険を伴う工程です。1999年に東海村で起きたJCO臨界事故は、再転換作業中に発生したものでした。
以来、日本で稼働する再転換工場は三菱原子燃料だけになり、供給量が不足。二酸化ウランの多くを輸入してきたわけです。
ここでもう一度、ウラン採掘から始まる核物質の動きを見直してみましょう。
しかし、ウラン利権・原子力利権にしがみつく輩は、自分以外の命と健康には無関心です。過酷事故が起きても何処吹く風。数万人が故郷を追われ、被ばくの恐怖に晒されながら生きざるを得ない状況も、まったく目に入らないのでしょう。
今、核物質の危険と利権が世界を駆け巡っています。