昨4月4日、強風の影響で福島第1の窒素注入装置が停止したというニュースが入ってきました。
毎日新聞が『福島第1原発:強風でフィルター詰まる 窒素注入装置停止』と報じたのです。
このニュースを読んで、「まだ窒素を注入していたんだ!」と驚かざるをえませんでした。
窒素注入の目的は、原子炉内の水素濃度を下げ、水素爆発を防止すること。いまだに、かなりの量の水素が1号機・2号機・3号機のいずれでも発生していることを示しています。
まず大きな問題は、東電も国も、水素の発生が続いているという事実を公にしてきませんでした(少なくとも積極的には)。水素の大量発生を認めたら「冷温停止宣言」など、到底できないからです。今回、窒素注入装置のトラブルによって、はからずも、「冷温停止宣言」が嘘八百であったことが明らかになりました。
水素発生の原因は、まったく説明されていません。もし、燃料棒の鞘(核燃料被覆管)であるジルカロイが残っていて、水から酸素を奪って酸化ジルカロイになる過程で水素が発生しているとしたら、炉心の一部はいまだに900℃以上の温度だということになります。<ジルカロイ→酸化ジルカロイ>の反応は、900℃以上でないと起きないからです。
もう一つは、強烈な放射線で水が分解され水素が発生している可能性があります。
いずれにしても、東電は水素発生のメカニズムとその量を速やかに公表すべきです。
一方、水素爆発を防ぐための窒素の注入は、放射性物質の漏出を加速させます。窒素は格納容器と圧力容器へ注入されているのですが、入る気体があれば、出る気体もあります。そうしないとパンク(爆発)してしまいますから。
出てくる気体とは何か?大部分は、放射性物質(核分裂生成物と超ウラン元素)の微粒子を含んだ窒素・酸素・水素であり、気体の核分裂生成物もあるでしょう。
水素爆発を防ぐために止むを得ない措置とは言え、窒素の注入によって、放射性物質の漏出が増加している事実から目を背けてはなりません。
窒素注入装置の停止に関して、東電は「水素濃度が危険値に達するまで約30〜50時間の余裕がある」と述べています。背筋が凍る思いがしました。
たった30〜50時間!窒素注入装置が止まっただけで、ふたたび水素爆発が起きるのです。
2号機は建屋が残っているので、吹っ飛ぶのは建屋でしょう。しかし、1号機と3号機には、もう建屋はありません。爆発で破壊されるのは格納容器です。もし3号機でその爆発が起きれば、4号機の核燃料プールも破壊される可能性大です。何しろ、4号機はすでに傾いていて、大きな余震での倒壊も危惧されているほどですから。
仮に、3号機の格納容器が水素爆発して、その爆風で3号機と4号機の核燃料プールが破壊された場合、どうなるのか… 冷却する水がなくなってしまいますから、炉心の分も、核燃料プールの分も、ほどなくメルトダウンし、暴走を始めます。溶けた核燃料の集まり方によっては、野ざらしで臨界状態という、最悪の事態になる可能性もあります。暴走する核燃料の量は、チェルノブイリ原発事故の4倍近い量。間違いなく人類史上最悪の事故です。
さらに、1号機から4号機の炉心と核燃料プールが、すべて破壊された場合には、チェルノブイリの6.6倍という、もの凄い量の核燃料が暴走します。東日本に人が住むことはできなくなるでしょう。
福島第1も私たちも、いまだに綱渡りの綱の上です。
「たった30〜50時間」で、東日本が失われる事態になるのに、福島第1近隣住民の帰還に向けて躍起の日本政府。もう一方の手では、大飯原発などで再稼働を画策しています。
本来やるべきなのは、福島第1に関するすべての情報を無条件に公開することです。
どうにも腑に落ちない水素発生の事実… メルトダウンした原子炉の中で、いったい何が起きているのか?
東電と国に、その原因と危険性、そして対策を明確にすることを強く求めます。