福島の2家族を含む全国7家族の一週間分の食事に含まれている放射性セシウムの量を計測(方法は、毎食一人前ずつ多く作ってもらい、それを分析に回す陰膳(かげぜん)法)。結果的には、5家族で一週間の間に1回ずつ5~9ベクレル/kgが検出されたというものです。
当ブログでも、その日にアップした「低線量内部被ばく/「毎日少しずつ」の恐怖」 で、番組内容に簡単に触れました。「厳密な検査でも、一部の家庭で微量の放射性セシウムしか出なかった。福島でさえも」という、このレポートの反響は大きく、「これで安心して子供に食事を食べさせられる」といった声が上がりました。
ところが、一方で、「データが変だ」という声も広がりました。当ブログにも、『あさイチ』のデータに関するコメントを頂き、さっそく、NHKのホームページに上がっているデータを見直してみて、ビックリ。
まず第一の疑問は、7家族7日分=延べ49日分の食事を調べ、5日分から5~9ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されているのですが、5件ともセシウム134かセシウム137のいずれかしか出ていないのです。
福島第1原発からの放出量を見ると、セシウム134(半減期:2年)が1.8京ベクレル、セシウム137(半減期:30年)が1.5京ベクレル(京は兆の1万倍)です。半減期の関係で、セシウム134の方が多少減りが早いのですが、現状では環境中にある福島第1由来のセシウム134とセシウム137は、ほぼ同量と見られます。おまけに、化学的な性質はまったく一緒。比重や融点、沸点なども一緒です。従って、2種類の放射性セシウムは、同じように、一緒に混ざったまま拡散していったと考えるのが妥当です。
下の地図は、文科省が発表した航空機モニタリングのデータです(福島第1の北側30キロ~60キロ圏)。セシウム137とセシウム134の広がり方も土壌への沈着量も、ほぼ同じです。
しかし、『あさイチ』では、5例が5例とも揃って片方だけなのです。これは、検査機器は大丈夫なのか?と疑って当然です。もう一つの大きな疑問は天然に存在する放射性物質であるカリウム40の値です。延べ49日分のデータは、一日平均で250~470ベクレル/kgの間に入っています。しかし、通常、食品に含まれるカリウム40の濃度を見てみると下の表のようになります。
ところが、『あさイチ』のデータは、49日分すべてが、一日の平均で250ベクレル/kgを越えているのです。主食とおかずをどんな組み合わせにしても、250ベクレル/kg以上は、あり得ません。
番組では、水(おそらく飲料水)と米だけのカリウム40のデータも取っていますが、これらも考えられないような高い数値になっています。
カリウム40のデータも正しいのかどうか、疑わざるを得ないというか、ほぼ間違っているでしょう。ところが、測定を担当した首都大学東京の福士政広教授もNHKも、「精度の高いゲルマニウム半導体検出器を用い、通常よりも時間をかけて綿密に調べた」と自信満々でした。
しかし、まず不思議なのが、専門家中の専門家であるはずの福士教授が、「セシウム137とセシウム134が一緒に出ない」「カリウム40の値が高すぎる」と疑問に思わなかったのでしょうか?NHKもNHKで、多くのスタッフが関わっているはずなのに、誰一人としてその疑問を持たなかったのでしょうか?
あるジャーナリストが、福士研究室に尋ねたところ、「機械の故障等で正確なデータではなく再分析中」という、とんでもない返事が返ってきたようです。故障した機械で取ったデータを全国放送に流すか!それも自信満々で。この記事を見た時、手が震えるような怒りをおぼえました。
NHKは、「調査を担当した首都大学東京と、外部分析機関の協力を得て、データの再検討を行っています。結果が出次第、改めてホームページで公表いたします」と。
番組が大きな反響だったことを考えれば、もし、異なる結果が出た場合は、ホームページでの公表だけでは許されないでしょう。『あさイチ』で再度特集し、正しい情報を伝え直すのが報道機関の役目であり、責任だと考えます。
これは、多くの命に関わる問題なのですから。