『年間5ミリシーベルト以上地域、国が除染へ 環境省方針』【朝日新聞9月27日】
私は、今回の事故で漏出・飛散した放射性物質に関して、その原子の一個一個に至るまで、東京電力が回収する責任を負っていると考えます。原賠法(原子力損害賠償法)の解釈はともあれ、少なくとも道義的責任は、まず東京電力にあると。これは、誰の目にも明らかなことです。
例えて言うなら、居眠り運転で重大事故を引き起こしたのは東電であり、国または経産省は、ドライバーが寝不足なのを知りながら、助手席で運転を黙認してきた存在です。
除染へ向けての国からの発表を見て、すごく気になるのは、「本来、東電がやるべきことだ」ということを明言していないことです。
いつの間にか、第2次補正予算の予備費からの出費が決まっていたり、第3次補正予算には百数十億円を計上する予定になっていたり。もちろん、迅速に動かなくてはなりませんから、一時的に税金で立て替えることは必要でしょう。しかし、それは、国が責任を持って東電から取り立てるべきです。そのことを最初に明言しておかなかったら、東電は間違いなく責任を回避して、逃げ切るでしょう。人類史に残る重大事故を引き起こした主犯を取り逃がすような、暗に、そんな動きを感じているのは、私だけではないでしょう。
もし、東電が、本当に払いきれないとなった時、分割や国有化を含めて議論すべきです。とにかく、東電からは搾り取れるだけ搾り取る。言葉は悪いですが、国には、この姿勢が求められます。
一方の東電も、除染に関して、ほとんど言葉を発しません。本来なら自分がすべきことを国や自治体に肩代わりしてもらわざるを得ないことに対する全面的な謝罪があってしかるべきでしょう。
それにしても、国レベルで除染が動き出すまで、なぜ、こんなに時間がかかったのでしょうか。「遅きに失した」と批判されてもやむを得ません。地元からの強い要望や東大・児玉龍彦教授など研究者の強い要請があって、やっと動き出そうか… という程度です。
チェルノブイリでは、強制避難地域や移住権利区域に指定された汚染レベルでも、避難や移住は補償しないし、かと言って、除染もしない。こういう非人道的とも言える対応が、半年以上に渡って続いてきたのです。もっと早く動き出していれば、たくさんの人たちの被ばく量を下げることができました。
最初は、福島の地元の人たちや自治体による自主的な除染活動でした。それを研究者たちが支援してきました。8月下旬から9月になると、住民の声に押されて、東京都や千葉県、埼玉県などでも、自治体によるホットスポット(教育施設中心)の除染が始まりました。そして、やっと国です。
今は、とにかく迅速に、大規模な除染を進めるべきです。
ただ、その時に、東電の責任を常に明確にしておくことを忘れてはなりません。埼玉県のある市で、住民が自主的に除染を進めた時のエピソードですが、集めた汚染土を東電の支社に持ち込んだところ、受け取りを拒否されたという出来事が、実際にありました。
さて、除染作業では、汚染された土、汚泥、枯葉といったものが大量に集まります。これをどこに集め、安全に保管するのかが大きな問題となっています。
ここでも基本は、「放射性物質の原子の一個一個に至るまで、東京電力が回収する責任を負っている」という立場です。福島第1から出たものは福島第1に戻すと。
東大の森口祐一教授の試算によると、除染土壌の体積は東京ドーム80杯分に相当するそうです。現実的に、一気に福島第1に運び込むのは難しいので、仮置き場や中間貯蔵施設が必要にはなるでしょうが、最終的には福島第1だと私は考えます。
もう一つあるとすれば、福島第1の電力を主に使ってきたのは東京なのだから、東京で保管するという考え方。現実的に場所がない?そんなことはありません。地下鉄の半蔵門線か大江戸線をそれに当てればよいのです。この二つ路線は、かなり地下深くを走っています。半蔵門線が永田町を通るのも象徴的な意味を持つでしょう。レールが敷いてありますから、奥から、どんどん汚染物質を詰め込んでいくのには適しています。荒唐無稽なアイデアと一笑に付されそうですが、このくらい大胆なことを考えないと、汚染物質が宙に浮いてしまい、あっちこっちで行方不明になるという最悪の事態を招きかねません。
最後にもう一度繰り返します。仮に、中間貯蔵施設や最終処分場が東電の敷地以外の場所に作られるとしても、私たちは、「放射性物質の原子の一個一個に至るまで、東京電力が回収する責任を負っている」という原則を忘れてはなりません。電力会社に原発事故に対する免罪符を与えないために。