格納容器はボルト&ナットとシリコンゴムで密閉!?

福島第1の事故で、大量を放射性物質を広範囲に撒き散らした水素爆発。そのメカニズムが、少しずつ明らかになってきました。

3.11、地震直後、少なくとも1号炉では、圧力容器周りの配管破損により、燃料被覆菅と水との化学反応でできた水素と、絶対に外に出してはいけない一次冷却水が熱湯や水蒸気として、圧力容器の外側にある格納容器に漏れ出していました。これは、格納容器内の急激な温度上昇と圧力上昇によって裏付けられています。
一次冷却水は、直接、燃料棒に触れて、それを冷やすものですから、多くの放射性物質が含まれています。しかし、圧力容器の外側には、強固な格納容器があり、その外には何も漏れ出さないはずでした。

水素爆発で吹き飛んだのは原子炉建屋でした。では、どのようにして、格納容器の密閉性は破られ、水素や放射性物質が、建屋にまで漏れていたのでしょうか?

NHKの『サイエンスZERO』という番組を見て、愕然としました。格納容器の密閉性は、どこにでもあるような、ボルト&ナットとシリコンゴムで保たれていたのです。

格納容器の上部は帽子のような形(上蓋)で取り外しが可能になっています。燃料棒を入れ替える時に、上部を開ける必要があるからです。胴体部分との接合は、原始的とも言えるボルト&ナットによる締め付けです。いくらなんでも、それだけではと言うので、間にシリコンゴムのパッキンを噛ませています。これは、ガスや水道の漏出防止とまったく同じ技術です。
シリコンゴムって何?もっとも身近に見られるのは、料理用のゴムヘラです。どこの家の台所にあるゴムヘラと同じ素材で、原子炉の密閉性を保っていたというのです。ちなみに、シリコンゴムの耐熱性は約260℃。

では、福島第1で何が起こったのか?ここでは1号炉のデータを追っていきます。
事故発生後、上がり続けてきた格納容器内の圧力は、地震発生からほぼ12時間後の3月12日の午前2時30分に8.4気圧という最大値を記録します。設計上の最大圧力が4.3気圧ですから、ほぼ倍。ここから少しだけ圧力が下がって、7.5気圧前後で安定します。内部の圧力で、上蓋を止めていたボルトが延びて、格納容器の胴体部分との間に隙間が出来、気体が外に漏れ出したのです。
さらに、炉心溶融を起こしている圧力容器から漏れてきた気体の温度は260℃をはるかに越えるものだったはずです。溶けた核燃料は2800℃以上に達していたのですから。
シリコンゴムは高温になると劣化・収縮します。もはや、ボルト&ナットとシリコンゴムで保たれていた格納容器の密閉性は保ちようがありません。水素や放射性物質を大量に含む気体が漏れ続けました。

これまで、「水素は分子の大きさが小さいから、ちょっとした隙間から漏れた」というような言い方をされていましたが、それでは、放射性物質の漏出の説明が付きません。
実は、「ちょっとした隙間」どころの話ではなかったのです。

それにしても、最先端の技術であるはずの原子炉の安全性をボルト&ナットとシリコンゴムで保とうとしていた愚かさ。いや、これは福島第1だけではありません。日本中、世界中の原子炉が、ボルト&ナットとシリコンゴム、もしくはそれに類する、どこにでもあるような技術で、「安全性を保っている」と言い張っているのです。

原子力安全委員会の斑目委員長は、「あの時点で水素爆発を起こすなんて誰も想像できなかったと思う」と語りました。しかし、彼は、格納容器の密閉性がシリコンゴムのパッキンで保たれていることを知っていたはずです。知っていて誤魔化したのか?それとも、それを水素爆発に結びつける科学者としての想像力が決定的に欠如していたのか?
斑目委員長だけではありません。多くの原子力関係者が、「ボルト&ナットとシリコンゴム」の事実を知っていたはずです。これを放置してきたこと、さらに、放置し続けていること。誰がどうやって責任を取るのでしょうか。

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