毎時1マイクロシーベルトで安心はできない

福島で、3.11以来初めて、空間線量が1マイクロシーベルト/毎時を切ったようです(文科省測定)。

『放射線量:毎時1マイクロシーベルト切る 福島、震災後初』【毎日新聞9月22日】

台風による風と雨が、表土に付着した放射性物質を吹き飛ばしたり、洗い流したりしたのは、事実でしょうし、少しでも空間線量が下がったことは喜ぶべきでしょう。
しかし、記事を読んだだけでは、「1マイクロシーベルト/毎時」という数字が、あたかも安心できる数字として一人歩きしそうなので、正確な評価をしておきたいと思います。

全国平均で自然放射線による空間線量(外部被ばく量)は0.05マイクロシーベルト/毎時とされています。概ね西高東低なので、事故前の福島は、おそらく0.03~0.04マイクロ シーベルト/毎時だったでしょう。しかし、正確なデータがないので、ここでは、0.05マイクロシーベルト/毎時としておきます。

まず、下がったとは言え、1マイクロシーベルト/毎は、事故前の20倍です。誰が、何を根拠に安全と言えるのでしょうか?しきい値無し直線仮説(LNT)に従うなら、放射線が原因でガンを発症する患者は、平時の20倍に増えます。

さて、1マイクロシーベルト/毎時から自然放射線の0.05を引いた値が、福島第1から漏出した放射性物質による外部被ばく量となり、0.95マイクロシーベルト/毎時です。一日のうちの8時間を屋外で過ごすとし、木造家屋による外部被ばくの低減係数=0.4も算入して計算すると、年間の実効外部被ばく線量は4.99ミリシーベルト/年。ほぼ5ミリシーベルト/年に達します。
原発労働者が白血病を発症した場合の労災認定では、累積線量が5.2ミリシーベルトで認められた例があります。年間では5.73ミリシーベルト/年で労災認定されています。いずれも内部被ばくも含めての値です【当ブログ『原発作業員:被ばくでがん 労災10人』参照】。

一方、今回の計算結果の4.99ミリシーベルト/年は、外部被ばくだけです。目の前の地面上には放射性セシウムがあるのですから、少なからず、それが体内に入り、内部被ばくは受けることになります。実質的に、5ミリシーベルト/年を越えるのは確かでしょう。

また、1マイクロシーベルト/毎時を切ったのは地上高2.5メートルのデータで、地上高1メートルでは1.36マイクロシーベルト/毎時が記録されていることも見落としてはいません。

福島の皆さんには、少しでも低い数字を信じて、安心したいという気持ちもあるでしょう。しかし残念ながら、まだまだ危険な数字です。
とにかく、必要な場所では、避難を実行し(累積線量が問題となりますから、これからでも遅くありません)、除染で対応できる場所では、徹底して除染を求めていく。この姿勢が必要だと考えられます。

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