九州電力の「やらせメール」事件は、皆さん、ご存じ通りです。国の住民向け説明番組の際に、九州電力の職員が子会社社員らに原発再開を支持するメールを投稿するように指示していたのです。この「住民向け説明番組」自体も、7人に限定された地元出演者の選出基準などが不透明で、どうも怪しいとは思っていたのですが、それを上塗りした形です。
「やらせメール」事件の発覚は7月2日、6日の衆院予算委員会では日本共産党の笠井亮議員が追及し、大きな問題となりました。
「やらせメール」事件の発覚は7月2日、6日の衆院予算委員会では日本共産党の笠井亮議員が追及し、大きな問題となりました。
さて、「やらせメール」事件が世間を騒がせる中、佐賀県主催による県民説明会が開かれたのが7月8日。
毎日新聞の記事には、「参加県民からは厳しい意見が相次ぎ、政府不信が渦巻いた」とありますが、一方で、「会場は拍手と怒号が交錯した。「原発は必要だ」との声もあったが…」という記述も。
私はすっかり騙されてしまい、「この期に及んでも、地元には強固な原発推進派がいるんだ」などと変に納得していた次第です。まさか、「やらせメール」事件で社長退陣にまで追い込まれている九電が、県民説明会に対しても、変なアクションを起こしているなどとは、露思わずでした。しかし実際には、県民説明会には九電から動員がかかっていたのです。
時系列を追っていくと、「しんぶん赤旗」が「やらせメール事件」を報じたのは2日。佐賀県が8日の説明会の参加者を自治体を通じて募集したのは、1日~5日でした。この間に、九電は本社やグループ会社の社員に説明会への参加を呼びかけていたのです。「やらせメール」の上に、説明会への組織動員が明らかになれば、さらに追い込まれることは分かっていたはずです。しかし、説明会への動員指令が取り消されることはありませんでした。本来ならば、みずから非を明らかにして、謝罪すべきところなのに…
コンプライアンス(法令遵守)が聞いて呆れます。会場で飛んだ「原発は必要だ」の声は、おそらく、九電の関係者でしょう。まんまと引っかかった自分自身が恥ずかしいです。
九電の醜態。総会屋まがいの手口を使って、世論を誘導しようとした罪は重大です。
しかし、なぜ、電力会社はそこまでするのか?原子力発電が追い込まれているからに他なりません。無理矢理、推進派の意見を捏造しなくては、もはや、やっていけないところまで来ているのが現状なのです。
これで、玄海原発の2号炉・3号炉の再稼働は、当面不可能になったでしょう。しかし、次に再稼働を狙っている原発もあります。油断することなく、一つ一つ、原発を止めていく。このことを肝に銘じましょう。