しかし、「年間20ミリシーベルト」を前提とする今までの姿勢よりはましですが、「学校 1ミリシーベルト以下」には、とん でもない誤魔化しがあることを見落とさないでください。仮に、学校にいる時間を8時間と考えれば、残りの16時間分をどう計算するのか… 誰がこんな詭弁を思いついたのか、心が寒くなります。
前提とすべきは、子供たちが、そして、すべての住民が浴びる放射線量を24時間計算で、年間1ミ リシーベルト以下にすること。これしかありません。
もう一点、原発事故の年間1ミ リシーベルトと、レントゲン撮影の年間1ミ リシーベルトでは、まったく意味が違うことを、再度確認しましょう。
病院のレントゲン室では放射性物質が飛び交うことはありません。私たちが受けるのは純粋に放射線(この場合はX線)だけです。それでも、危険がありますから、必要以上にレントゲン撮影を受けてはいけないのです。
一方、今の福島(というか東北・関東)は、たくさんの核分裂生成物(放射性物質)が宙に浮いたり、地面に落ちたりして、それが私たちに放射線を浴びせている状態です。
この間、議論されている、「年間○○ミ リシーベルト」とは、体の外にある放射性物質から、体表と通して被ばくする量(外部被ばく量)を表しているに過ぎません。レントゲン室の危険性と同じ考え方です。放射線を発する元である放射性物質自体が私たちの体内に入ってくることは、まったく想定も、算入もしていません。
放射性物質を吸い込んだり、水と一緒に飲んだり、食べ物と一緒に食べたりしたらどうなるのか… それが内部被ばくです。少ない量の放射性物質を体内に取り込んだだけで、深刻な放射線障害を起こします(早い話がガンになる可能性が高まります)。
ガイガーカウンターが示す線量(シーベルト)は、外部被ばくの量そのものを示していま す。放射性物質が、目の前にあれば線量は上がりますから、ある程度、内部被ばくの危険性を指し示しているとも言えますが、正確な対応はしていません。
それは、核分裂生成物(放射性物質)の種類によって、甲状腺ガンを起こしやすくなったり、白血病を起こしやすくなったり、内部被ばくによる障害は様々だからです。
線量(シーベルト)では、セシウム137なのか、はたまた別な物質なのか、その種類を特定することはできません。また、ストロンチウム90などが放射するベータ線(電子線)を通常のガイガーカウンターで検出することはできません。
どんな種類の核分裂生成物(放射性物質)が、どこにどの位存在しているのか。このデータを東電や国は調べているのか?知っているのに詳細を発表していないのか?
10年、20年ではありません。私たちは、今、100年、いや1000年に及ぶ恐怖と直面しています。
どう対処するのか… そのためには、徹底したデータの収集と情報の開示が必要なのです。そして、少しでも危なかったら、「逃げる権利」を保証すること。もちろん、東電と国の責任で行うことは言うまでまでもありません。
「学校 1ミリシーベルト以下」は、確かに前進です。しかし、気を緩めてはなりません。