年間1ミリシーベルトで、避難計画の再考を

文科省が4月20日に教育現場向けに出したに「放射能を正しく理解するために」なる通達が、いまだに取り消されていません。この通達こそ、子供にまで年間20ミリシーベルトという途方も無い被ばく線量を強要する出発点でした。

非常に楽観的(!?)とされる「国際放射線防護委員会(ICRP)」の推測でさえ、「ガンなどで死ぬ危険は1000ミリシーベルトあたり5%高まる」としています。被ばく線量と「ガンによる致死リスク」は正比例しますので、100ミリシーベルトで1000人中5人、20ミリシーベルトで1000人中1人となります。ただ、子供は大人に比べて放射線の影響を5倍受けやすいので、20ミリシーベルトを被ばくすると1000人中5人の子供のガン死が増えるということです。ここで注意しなくてはならないのは、ICRPの計算は累積被ばく線量だということです。もし、年間20ミリシーベルトが2年続けば、子供のガン死は1000人中10人に、5年続けば25人になります。
一方、米国国立アカデミーの全米研究評議会の報告書では、「年間20ミリシーベルトは、子供の発がん比率を200人に1人増加させる」としています。

そもそも、一般人の被ばく限度量は年間1ミリシーベルトです。実は、この基準も科学的・医学的裏付けがあるものではなく、「これより厳しくすると原子力産業が立ちゆかない」という事情か生まれたものなのですが、ここではそれに噛みつくのはやめて、一応、世界標準として存在している「被ばく限度量=年間1ミリシーベルト」を前提に話を進めます。

1986年に起きたチェルノブイリ原発事故。ソ連ゴルバチョフ政権の対応は遅れが目立ち、ヨーロッパ全体へその被害が広がりました。しかし、チェルノブイリの時ですら、居住禁止(=強制移住)のエリアは、年間5ミリシーベルトでした。ゴルバチョフ政権は数千台のバスを動員して、住民の移住を決行したのです。

日本政府は、年間20ミリシーベルトの撤回を頑なに拒んでいます。避難地域が広がって経済的支出が増えることをもっとも恐れているのでしょう。この姿勢は、子供の命、人の命を何とも思っていないことと同じです。
今こそ、年間1ミリシーベルトを基準に避難計画の再考をすべき時です。

追記1:
個人的には、子供だけの集団疎開には疑問があります。なぜなら、この避難は短期間で終わるとは考えられないからです(チェルノブイリの例を見ても明らか)。避難する人たちの負担は大きなものになると思いますが、家族単位、あるいは地域共同体単位での集団移転を考えるべきでしょう。それを支える義務は東電と国にあります。東電のすべての保養施設を開放し、各地の公営住宅や旅館を借り上げて、速やかに実行すべきです。

追記2:
「除染」とか「土壌改良」とか言っている人たちもいますが、校庭だけで良いならそれも可能です。しかし、農地や山林をどうするつもりなのでしょうか?大規模な除染によって、短期間で汚染地域を清浄化することは不可能です。何よりも、まだ核分裂生成物(放射性物質)が出続けているのですから。

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