予想されていたことですが、遂に核分裂生成物(放射性物質)による水道水の汚染が始まりました。東京で深刻な状況になったのは、二日ほど降り続いた雨によって、水源地付近で大気中に浮遊していた核分裂生成物が、雨とともに落下した影響が大きいものと考えられます。
「都内における大気浮遊塵中の核反応生成物の測定結果について(2011年3月15日~3月23日)」(東京都立産業技術研究センター)のデータを見ていると、東京での大気中の核分裂生成物の量は、雨が上がったあとは落ち着きを見せているので、今日明日で、水道水の汚染は一旦落ち着くのではないかと思われます。
野菜に関しては、「洗えば落ちる」という誤魔化しに騙されてはいけません。野菜は、大気中や地中にある栄養素を濃縮して私たちに供給してくれるからこそ重要なのです。甲状腺ホルモンの生成に貢献するヨウ素もまた私たちにとって必要不可欠な栄養素の一つです。しかしながら、自然界に存在するのはヨウ素127。核分裂生成物はヨウ素131で、ベータ線やガンマ線という放射線を放出しながら、安定したキセノン131という物質に変わっていきます。放射線はDNAを傷つけます。
やっかいなのは、私たちの体がヨウ素127とヨウ素131を見分けられないことです。ヨウ素131が体内に入ってしまうと、ヨウ素127と同じように甲状腺に集まっていきます。少々薄い状態で体内に入っても、甲状腺に集まることで濃縮されるのは言うまでもありません。そして、甲状腺にある細胞(より正確に言えばDNA)に集中的に放射線を浴びせるということになります。体内の特定の器官に核分裂生成物が集まって、ピンポイントで放射線(主にベータ線)を放出し、DNAに損傷を与える体内被曝の典型例です。
ヨウ素131による体内被曝は、甲状腺の発達が盛んな子供たちにとっては、極めて深刻な事態を引き起こすとされます。チェルノブイリでは、被曝した子供たちの甲状腺癌が、今でも大きな問題となっているのはご存じの通りです。
「ヨウ素131は半減期が8日だから、8日経てば半分になる」と、盛んにメディアがいっていますが、これは今回のような深刻な事態では、「8日経っても半分にしかならない」と言うべきでしょう。
今、テレビを観ていたら、今朝は1号機から4号機までのすべてで白い煙が上がっています。おそらく水蒸気でしょう。その中には、ヨウ素131を含む核分裂生成物が大量に含まれています。この放出を止めない限り、水道水汚染が本質的に解決することはありません。
しばらくは、天気を睨みながらの一喜一憂が続くのでしょう。
東京都下にある私の家の近所では、2、3日前から何事もなかったかのように、ウグイスが鳴き始めました。しかし、今年は、その声から穏やかな春の訪れを感じとることができません。