モンゴルの最終処分場

5/9、毎日新聞の一面トップは、「核処分場:モンゴルに建設計画 日米、昨秋から交渉 原発ビジネス拡大狙い」という大スクープでした。
見出しにある「核処分場」とは、高レベル放射性廃棄物の最終処分場のこと。世界的に行き先がなくなってしまい、各国とも苦慮している原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分場を日・米・モンゴル共同で作り、ロシアやフランスの原発ビジネスに対抗する計画だったようです。また、日本もアメリカも国内で高レベル放射性廃棄物を処理できず、溜めるだけ溜め込んでいる状況ですから、それをモンゴルに持って行こうという腹づもりもあったでしょう。世界中の目を避けるように極秘裏に、とんでもない計画が進んでいました。

さて、高レベル放射性廃棄物の最終処分場とはどういうものなのでしょうか?まず、高レベル放射性廃棄物=使用済み核燃料と考えて問題ありません。日本では一日あたり1.4トンも発生しています。
使用前の核燃料は核分裂を起こすウラン235が4.1%、ほとんど核分裂しないウラン238が95.9%というのが、福島第1原発のような沸騰水型原子炉では一般的です。
約3年間原子炉内で使用したあと、使用済み核燃料になります。この時点でもウラン235は最初の1/3ほど残っているのですが、核分裂の効率が悪くなっているので、捨てざるをえません。また、ウラン235の核分裂で発生した核分裂生成物質(セシウム137・ストロンチウム90など100種あまり)が4.5%、同じく核分裂で発生した中性子をウラン238が吸収してできるプルトニウム239が1.1%とという比率になります。

この放射性物質だらけの使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄物)を地層の奥深くに埋めてしまおうというのが、最終処分場です。

今、フランスと日本では、使用済み核燃料を再処理して、ウラン235とプルトニウム239だけを取り出し、再度発電に利用する核燃料サイクルを実現しようとしていますが、この場合も、再処理施設から大量の高レベル放射性廃棄物が出てくることに違いはありません(核燃料サイクルと再処理施設は他にいくつもの大きな問題を抱えているのですが、それは別の機会に触れます)。

日本では現在、高レベル放射性廃棄物をどうしているかというと、大半は原子力発電所の敷地内で保管している状態です。2009年9月末時点で1万2840トンに膨れあがっています(これまでにフランスとイギリスに再処理を委託した7100トンを除いてです)。

世界中で、現在までに最終処分場の建設が具体的に始まっているのはフィンランドだけ。2020年に操業を開始する予定ですが、「高レベル放射性廃棄物が安全になる十万年後まで責任を負いきれるか」という議論が巻き起こっています(映画『100,000年後の安全』)。
アメリカでは、2002年にブッシュ政権がネバダ州ユッカ山地に最終処分場の建設を決定しましたが、地元の反対にあってオバマ政権は2009年に計画中止を発表。高レベル放射性廃棄物の行き先は宙に浮いています。

日本だけでなく、世界の原子力発電は、まさに、トイレのない超高層マンション状態。どこも、放射性廃棄物であふれんばかりです。それをモンゴルに押しつけようという、とんでもないプランが動き始めていたのです。

人類は、もうこれ以上、放射性廃棄物を作り出してはいけません。そのうねりを日本から生み出していく。それは、唯一の被爆国であり、福島第1の事故を経験した日本人の責任とも言えるのではないでしょうか。
そして、今すぐにすべての原発を止めたとしても、日本だけですでに1万2千トン以上の高レベル放射性廃棄物を抱え込んでいます。どこかに最終処分場を作らざるえないという厳しい現実から目をそらすことはできません。

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