再処理工場の闇

この間の毎日新聞のスクープで、闇に包まれていた核燃料サイクルをめぐる原子力村の利権構造の一部が明らかになりました。

核燃サイクル原案:秘密会議で評価書き換え 再処理を有利
核燃サイクル「秘密会議」:まるでムラの寄り合い

まだ一端が表面化したに過ぎませんが価値のある報道でした。

しかしながら、再処理って何?という疑問も世の中には、まだまだあります。今回は、これまであまり注目されていない側面から、核燃料サイクルの中核をなす再処理工場の問題を検証し直したいと思います。

●新ウラン燃料・使用済みウラン燃料・MOX燃料

まず最初に、新ウラン燃料と使用済みウラン燃料、そしてMOX燃料では、なにがどう違うのかを確認しておきましょう。
新ウラン燃料は、天然ウランを原料にして作ります。天然ウランは、ウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%ですから、そのままでは核分裂を起こしません。濃縮してウラン235の濃度を4%程度にまで高めることで、原子炉で核分裂を起こす新ウラン燃料にします。

新ウラン燃料は、原子炉内で約3年間、臨界状態に置かれ、連鎖的核分裂反応を起こします。この時に発する熱を発電に利用するのが原子力発電です。
使用済み核燃料の中には新たな放射性物質が生まれます。セシウム137やヨウ素131といった核分裂生成物とプルトニウム239。さらにプルトニウム239以外の超ウラン元素です。超ウラン元素とはウランよりも重い元素のことで、ネプツニウムやアメリシウム、キュリウムなどがあります。いずれも、放射線を発する危険な元素です。

MOX燃料は、ウラン燃料の核分裂反応で生じたプルトニウム239を再度、発電に利用しようというものです。
ウラン原爆の原料がウラン235で、プルトニウム原爆の原料がプルトニウム239であることからも分かるように、プルトニウム239は連鎖的核分裂反応を起こす物質なのです。

実際のMOX燃料は、使用済み核燃料の中からウラン238・ウラン235・プルトニウム239を抽出して、原子炉で使うのに都合の良い割合で混ぜ合わせています。

しかし、MOX燃料は、最初から強い放射性を帯びていて、発熱もするなど、ウラン燃料にはない危険性を持っています。製造の過程で純粋に近いプルトニウムを生成するので、安全保障上も大きな問題となります。アメリカが使用済み核燃料の再処理を行っていないのは、そのせいだと言われています。

さて、本来ならばこの地球上に存在しなかった危険な放射性物質である核分裂生成物や超ウラン元素を含む使用済み核燃料。
残念ながら、原発反対派と言えども、もはやここから目をそらすことはできません。「負の遺産」として、明確に認識して、考え得るもっとも安全な方法で、使用済み核燃料を処分する必要があります。
そこで焦点になっているのが、使用済み核燃料をそのまま最終処分場に埋める「直接処分」か、一部を再利用する「再処理」かなのです。

●再処理では海洋投棄が不可欠
再処理の話に戻りましょう。
下の図は、<新ウラン燃料→使用済みウラン燃料→MOX燃料>という、原発推進派が大好きな核燃料サイクルの一部をクローズアップしたものです。

使用済みウラン燃料から左右に「直接処分」と「再処理」へ枝分かれしていますが、「直接処分」がシンプルなのに比べて、「再処理」には複雑な工程が絡みます。さらに、「直接処分」にはない「劣化ウラン」や「海洋投棄」という大きな問題が出てきます。

まずは、海洋投棄に注目しましょう。
「廃棄物を海に棄ててはいけない」という国際的合意は、1972年採択(1975年発効)の「廃棄物その他の投棄に係わる海洋汚染防止に関する条約【通称、ロンドン条約】」によってなされました。
ロンドン条約の主なターゲットは放射性廃棄物。それまで各国は、核兵器製造や原子力発電で生じる放射性廃棄物を無原則に海に捨て続けてきました。日本もその一つです。
しかし、条約や法律の常、ロンドン条約にも抜け道があります。規制しているのが、高レベル放射性廃棄物なので、液状の廃棄物を水で薄めて海に流してしまえば、条約違反にはならないのです。船からの投棄を考えれば、薄めると量が増えてしまって、効率が悪くなるのですが、陸から直接棄てる場合は話が別。「薄めればOK」という、この抜け道を狡猾に利用したのが再処理工場なのです。

次の図は、「核燃料再処理の流れ」を示しています。

使用済み核燃料は、硝酸で溶解して、核燃料生成物とプルトニウム以外の超ウラン元素を取り除いてから、ウランとプルトニウムの再処理に入ります。「核燃料生成物と超ウラン元素はガラス固化体に固めるから大丈夫」というのが推進派の主張ですが、ガラス固化体にする前に、水分(液体)を絞らなくてはなりません。その液体まで、すべて保管していたら、いくら場所があっても足りませんから。そして、搾り取った後の液体には、必ず核燃料生成物と超ウラン元素が残ってしまいます。
しょうがないから水で薄めて海に流すと… 世界的に有名な再処理工場としてフランスのラ・アーグとイギリスのセラフィールドがありますが、どちらも海の中に数kmという廃液パイプを伸ばして、水で希釈した放射性物質を堂々と流しています。六ヶ所村でも同じ計画のはずです。

六ヶ所村沖は、世界三大漁場の一つとして知られる三陸沖の北端。ここに、放射性物質の海洋投棄を行う。絶対に許されないでしょう。

●劣化ウランはどこへ?
使用済み核燃料の再処理の(建前上の)目的は、MOX燃料と再生ウラン燃料の製造です。
ただ、この過程で、連鎖的核分裂反応をしないウラン238の濃度を下げなければなりません。ウラン238が多いと連鎖的核分裂反応が起きないからです。
従って再処理の過程では、どうしてもウラン238(緑)が余ってしまいます。しかし、ウラン238だけの純粋な抽出は難しいのでウラン235(黄)や、特に放射性が強く危険なウラン236(紫)も残ってしまいます。これを「劣化ウラン」と呼びます。

劣化ウランは、そのままでは原爆の原料にもなりませんし、発電にも使えません。しかし、環境や生物に悪影響を及ぼすには十分の放射線を発する危険物質です(イラク戦争での劣化ウラン弾問題をご存じ方も多いと思います)。

今、日本で論じられている再処理や核燃料サイクルの議論からは、完全に劣化ウランの問題が落ちています。どこにどう劣化ウランを保管するつもりなのか、推進派からの説明を聞いてみたいものです。

●使用済みMOX燃料は再処理できない!?
再処理と核燃料サイクルの問題を調べていく中で、とんでもない嘘に突き当たりました。「核燃料サイクル」そのものが虚構=大嘘なのです。

推進派の説明によれば、「使用済みウラン燃料→再処理→MOX燃料→再処理→MOX燃料…」という、文字通りのサイクルで核燃料が回るはずでした。しかし、MOX燃料の再処理は少なくとも六ヶ所村タイプの再処理工場ではできないのです。なぜなら、MOXの使用済み燃料は硝酸に溶けにくいから… なんと馬鹿馬鹿しい!
MOXの使用済み燃料を再処理するためには新たなタイプの再処理工場が必要だそうです。今、世界中、どこを見渡しても、それは存在しないし、技術的な見通しもまったく立っていない状態です。
「核燃料サイクル」に騙されてきた人たちは大いに反省すべきです。核燃料はサイクルできません!

なんともはや、とてつもない嘘まで並べて推進されてきた核燃料サイクル。
誰がそれを望んでいるのでしょうか?
経済の原点に帰ってみましょう。電力会社が電力消費者に、より安い電気を供給しようと自ら努力するでしょうか?彼らの本意は、できるだけ高く売ることです。おまけに、日本の電力業界は無競争なので、ブレーキが掛かることはありません。
一方で、核燃料サイクルのような大事業を進めれば、企業としては大きな金が動くので、その過程で儲けることができます。利権も生じますから、そこで私腹を肥やそうという人間もたくさん群がってきます。結果は、電力料金に跳ね返り、いざ事故が起きれば税金投入。故郷に何十年、いや、永遠に帰れない人たちも出ます。私たちにとって、こんな理不尽なことはありません。

誰がどう考えても、経済的なメリットがなく、安全性の面からも危険視される核燃料サイクルが、推し進められてきた事実。その闇を徹底して暴き出すことで、この最悪の構造を打ち壊す第一歩にしなくてはなりません。

使用済み核燃料の処理に関しては、全量直接処分しかありません。
そして、この問題を考えるための前提として、今後一切、使用済み核燃料を増やさないこと。原発の再稼働を許さず、「直ちに廃炉へ」という決定を行う必要があります。

順番としては、「核燃料サイクルの放棄→すべての原発の廃炉決定→最終処分場の決定と具体化」となるのでしょう。そうしないと、「最終処分場があるのだから、原発を稼働してもよい」などと、馬鹿げたことを言い出す輩が出ますから。

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